(九州(福岡)地域レポート/平塚)【福岡貿易会、福岡・大連未来委員会 総会報告他】

1.九州経済産業局・星野局長講演会に出席
 6月2日、福岡貿易会総会・講演会に出席した。講演では、九州経済産業局・星野局長が「海外ビジネスが握る九州経済成長の鍵」と題し、世界及び日本経済を取り巻く環境の変化、九州経済の現状、九州企業の海外ビジネスの展望及び経済安全保障への対応について語った。
 (なお、星野局長は今月の人事で九州経済産業局長を退任、8月末にはJETRO北京事務所長でご赴任予定です。)
 ① 背景:中東情勢や米国と中露の対立を主軸に地政学的緊張が世界各地で局所的に顕在化し、資源・物流・経済環境が不安定化。海外情勢の変化が企業経営に直接影響。
 ② 現状:
 (1) 世界規模で海外市場の成長を取り込み、収益を拡大しながら、環境変化に強い事業体制の構築を進める動き。
 (2) 九州の経済は首都圏や関西圏と比べ、構造的要因から、成長の取り込みが相対的に不十分ではないか。九州の強みを海外ビジネスに活かす「九州地域未来戦略(素案)」。「九州地域未来戦略/戦略産業クラスター計画(素案)」では、特に九州で投資が進む半導体分野をはじめとする以下の5分野が相互にシナジーを生みながら各戦略産業の成長を目指す。
 ・ 強い経済を戦略物資と情報インフラで支える「新生シリコンアイランド九州」
 ・ アジアのフロントラインでエネルギー・GX・経済安全保障を支える「サーキュラーアイランド九州」
 ・ 地域に根ざすものづくり基盤を活用した「造船・防衛・航空宇宙」クラスター
 ・ 度重なる災害経験を活かした「防災・減災・国土強靱化・港湾ロジスティクス」
 ・ 地域資源を活かし、国内外の需要獲得も視野に入れた「ヘルスケア・フード・ツーリズムアイランド九州」
 ③ 問題提起:
 (1) 他方で、九州はアジア近接・産業基盤・食・観光資源等の強みを有し、ポテンシャルは高い。中国は世界のグローバル・バリューチェーンにおいて中心的な役割を果たしており、九州にとっても、最大の輸出相手国であり、最多の海外進出先国である
 (2) 海外ビジネスが最大の成長機会(国内市場の限界、外需取り込みの必要性)。九州におい海外が成長の一つの鍵である
 ④ 突破口の視点:
  東アジアへの依存が高い(市場・調達ともに偏在し、これまでの成功モデルが今後のリスクにもなる)
 ⑤ 今後の方向:
 (1) 市場は動いている。成長の中心は新興国へ(グローバルサウスへの展開)。これらの成果を自由で開かれたインド太平洋=FOIP(Free and Open Indo-Pacific)の実現にも繋げていく。
 (2) 経済安全保障への対応が不可欠(供給途絶・規制・技術リスク、サプライチェーンの見直し)
 ⑥ 総括:
  海外展開はチャンスとリスクを併せ持つものであり、「攻め(稼ぐ力)×「守り(事業継続力)」を両立できる企業・地域が成長する。九州の未来は「世界とのつながり方」で決まる。

2. 福岡・大連未来委員会総会・講演会
 7月1日、第33回福岡・大連未来委員会総会に引き続き、在瀋陽日本国総領事・高田真里氏による「中国東北三省から見た中国と日中関係 ~福岡と大連の未来に向けて~」と題した講演会が開催された。高田総領事は、1992年東京大学教養学部卒、外務省に入省し、合計14年半の北京、香港、重慶、瀋陽を含む中華圏駐在経験を活かし活躍中。
 ① 中国には様々な多様性がある。中国は欧州全体とほぼ同面積で、自身が駐在した重慶は崖と山と川と谷の都市で夜景がとてもきれいな街であり、中国人が最も訪れたい都市として挙げられている。一方、現在瀋陽総領事館で担当している黒竜江省、吉林省、遼寧省の東北三省は大連を除き非常に寒く、満州事変や張作霖爆殺事件等で有名な瀋陽の冬は最低気温零下20度、重慶の夏は最高気温40度で、これだけでも気温差は60度にもなる。東北地方は春を待ち望み、料理は粉ものが多く、油で揚げたハイカロリーなものを好む。社会も多様性に満ちている。圧縮型発展と呼ぶが、急速に発展したので世代間で考え方が異なり所得格差も大きい。世代間で就職・結婚・出産等への考え方も全く異なり、所謂価値観が違う。碁盤の目と同じく、どこを対象として攻めるのかで基本スタンスが全く違ってくる。
 ② 経済と社会。土地は日本の25倍、人口は10倍である。経済成長は日本の1%に対し、鈍化したとはいえ中国は2025年度で5%成長している。広東省だけで韓国一国を超えるGDPを誇る。一人当たりGDPはまだ低く世界第89位。
 急速に合理的な発展を遂げており、究極のスマホ社会となっている。基本的に中国では財布も名刺も持ち歩かない。但しスマホ社会は中国政府により監視されている。チャットのやり取りまで監視されているが、便利なので国民はスマホを手放せない。
 現代ではスマホメーカーが電気自動車を作る時代で、スマホメーカーは走りには無関心である。 
Try & Errorを恐れない。自動運転は実用化されており、失敗は成功の母である。EVの過剰生産が原因で利益が出づらくなった。
 経済には陰りが見え始めている。不動産は本来地方政府の重要な収入源であった。少子高齢化が進み経済は下向きである。失業率が高くデフレも激しい。所得・経済格差は大きい。内巻きモデルと呼ぶが、業界内、企業内の過度な激しい競争が起きている。EVでも人型ロボットでもこれだと思えば多くの企業が参入しすぐに過当競争が起きる。従い技術革新も早くまた多数企業の倒産も起きている。過剰生産→国内市場の飽和→海外市場への進出につながり、全体のプロセスが速い。中国社会の「内巻き」は社会問題を生んでおり、受験戦争で苦労して大学を卒業しても就職難に苦しむ人が多い。
 2026年3月開催の全人代ではGDP成長目標を4.5~6%としたが成長に質を求めるようになった。第15次五ヵ年計画では2030年までに2020年の一人当たりGDPを倍増させることを目標として挙げている。
 ③ 政治についても触れる。多様性もあるが統一的でもある。習近平は、共産党総書記、国家主席と中央軍事委員会の主席も兼ね、反腐敗闘争に傾注しているが独裁化の傾向も見える。地方レベルでも闘争が多い。来年は人民解放軍の建軍100年、2049年は建国100年にあたる。何かが起きる予感。
 ④ 日中関係は高市首相発言が発端で険悪だが、中国側の反応は「日本政府が従来対応を変えた」と言っている。日本のことを新型軍国主義だと言っている。残念ながら政府間交渉は何もできない。自分も現地の政府関係者に面談を申し入れても会ってすらくれない。
 貿易・経済面でも輸出規制措置が広くとられており、新規進出は困難な状況で、中国における日系企業の存在感は低下している。総領事館の重要な業務の一つである中国人向けの短期旅行ビザは壊滅的で、医療訪問ビザや留学ビザは出ている。
 日本からの訪中団は基本的に受け入れられない。今年の大連アカシア祭りには日本の自治体は招待されず、日本人アーティストの中国公演も相次ぎ中止されている。大連で日本人2名が拘束されたが、これは税関当局に拘束されたもので公安によるスパイ容疑ではない点に注意が必要。
 中国側はあくまでも輸出入規制の経済問題として捉えている。日本にとって中国は最大の貿易相手国であるが、2013年の在留邦人が150万人を数えていたのに対し、2024年には10万人と激減しており、人的往来も減少している。
 ⑤ 交流の可能性について。瀋陽は、経済はよくないのに幸せな都市と言われている。市民も消費にはお金を遣う。ローソンやデサントも進出している。中国社会は成熟化し多様化しており、モノよりコト消費に変わりつつある。東北三省は日本への理解は深いが上海と比べると日本品の供給が不足していると思われる。
 今後は「日本の中での日中交流」(要は日本人の考え方の変革)が必要で、実際に中国にいて治安面での不安感はなく、周りに日本ファンも多い。今こそ将来に向けた種まきをすべきで、日本国内の反中感情を早く払拭するためにも百聞は一見に如かずの気持ちで中国を訪れてほしい。

3. 日中投資促進機構主催「China + Asia Management School」に参加
 7月16日、福岡銀行本部ビルにて開催されたワークショップ形式のセミナー{China + Asia Management School}に参加した。参加者を4つのグループに分け、アジア全体を視野に入れた新たな「構想」が必要ではないかということをテーマに、参加各社の現状と将来方向・アジア構想について議論した。参加各社の考え方や本音を聞く良い機会を頂戴できた。

4.九州地域(特に福岡)でのインバウンド需要は引き続き堅調
 福岡空港国際線の合計便数は、2026年5月実績値2,254便(対前年比103%)、 6月見込値2,098便(対前年比101%)だが、7月見込値は微減の2,120便(同97%)となっている。国・地域別では、2026年5月実績値で韓国、台湾及び香港が前年同月比120%を超えているものの、やはり中国の前年同月比31%と大幅減となっているのが大きく影響している。福岡空港出入国者数では、出入国者数合計で2026年5月実績で850,856人(前年同月796,478人、106.8%)で外国人出入国者数は2026年5月の実績値で724,679人(前年同月668,066人、108.5%)。一方、日本人出入国者数も2026年5月実績値で126,177人(前年同月128,412人、98.3%)と微減している。福岡空港では、日本人のアウトバウンド需要喚起を目的に、「福岡発、仁川経由で世界へ!」と銘打って乗り継ぎ特典キャンペーン(20,000ウォン分のWAWPASSや福岡空港国際線立体駐車場24時間無料サービス券提供)を実施している。

平塚 伸也(2026年7月)