【天南海北】『中国のフードデリバリー事情』

ここしばらく食べ物の話を書いてみましたが、今回は食べ物を運ぶ、つまりフードデリバリーの話をしてみたい。

昨年は2回ほど中国に行ってきましたが、街に出かけると、電動バイクを乗っているフードデリバリーの姿がよく目につきます。車道も歩道も縦横無尽で走り回っており、歩行者としては結構ヒヤッとする場面が少なくありません。

成都市内のフードデリバリー(筆者撮影)

中国のフードデリバリーはここ数年に急成長しながら、M&Aや業界再編を経て、いまは「美団(メイトワン)」と餓了麽(ウーラマ)の2強に集約されています。この2社のデリバリーアプリを合わせると、中国のフードデリバリー市場の95%のシェアを握っています。下の写真を見れば分かりますが、街の集合地点で美団の配達者(騎手(ライダー)と言われる)が一帯を埋め尽くしている風景です。

成都市内:美団の騎手たち(筆者撮影)

さて、フードデリバリーの利用者はどんな人たちでしょうか?ある調査では、中国のフードデリバリーサービスのユーザーは、18歳から39歳が75%を占め、圧倒的に若年層が多い。職業別では、2021年のフードデリバリーアプリ利用者は、ホワイトカラー、学生、ブルーカラーが中心で、全体の95%を超占めています。
また、フードデリバリーサービスの利用シーンは、仕事中(52.4%)、外出したくないとき(51.4%)、料理をする時間・スキルがないとき(39.8%)、キャンペーンに惹かれた(34.5%)、悪天候(26.0%)、出前の味が好き(18.8%)となっています。

ということは、30代以下の利用者(80後)がほとんどであり、上の年代とまったく異なる価値観を持っていると伺えます。上の調査結果の通り、「仕事中」や「外出したくない」のが半数以上を占め、料理を作る、または(外食で)注文して待つ時間を割きたくない考えですね。以前、北京大学の先生から聞いた話ですが、寒い冬の中、学生は学食に行くのを躊躇い、30分配達のフードデリバリーを頼むのが流行っている、ということです。

60代の自分は料理を作る(待つ)のが面倒臭いとは、ややカルチャーショックですが、これは現実の世界でしょうね。確かに中華料理を作るのが結構面倒であることは間違いありません。食材購入から、洗う、切る(捌く)、調味料などの調合、炒める(茹でる)など、かなり複雑なプロセスで、場合によって1、2時間を軽くかけて仕込みます。こういうのを考えると、30分以内のデリバリーなら、確かに「生産性」が高いと言えます。

また、デリバリーは宅配だけでなく、公共場所でロッカーを設け、ユーザーは取りに行くというスタイルもあります(下図)。これもスマホ注文し、所定の時間と場所に行きQRコードで開錠して完了です。確かに便利ですね。

武漢市内のフードデリバリー・ロッカー                (筆者撮影)

また、料理の配送だけでなく、スーパー買い物の宅配なども展開しており、サービスの多様化を図っていると見られます。
中国はいま、1000万人超の騎手が全国隅々まで駆け回っていると言われ、経済不調の時期に雇用対策、ないし社会の安定に一役を担っていると言えよう。

料理と買い物のデリバリー(筆者撮影)

雷 海涛(2024年1月)