【天南海北】『ガチ中華(続編):私の体験談』

前回はガチ中華について書いてみましたが、もう一度読んでみたら、話しがやや一般的でリアル感がなかなか出て来ないなと思っています。今回は自分の体験談を盛り込んで再チャレンジしてみようと思います。

これからの内容は店からのご了承を得ており、公開して良いのですが、単なる店の宣伝ではなく、自分の体験を交えてガチ中華の実態が共有できれば幸いです。

高田馬場駅から早稲田通り沿いで、早稲田方面に向かって100メートルのところに、本件の店があります。数多くの雑居ビルの1つで、5階に上がるとすぐにその店の入り口があります。中に入れば中国そのものの雰囲気で、客も8割以上が中国人ではないでしょうか。

「馬記 蒙古肉餅」店内。最近改装されたが、以前あった赤い提灯が無くなりちょっと寂しい…

店名は「馬記 蒙古肉餅」で、店のオーナー兼シェフは馬さんで「馬記」という名づけです。また、「蒙古」とありますが、モンゴル料理というよりは牛羊肉を中心とするイスラム系で、炒め料理や味付けは中華料理そのものです。北京に行ったことのある人なら北方系の中華料理と言って違和感はありません。また、店は馬さん夫婦の経営で、お二人は来日する前、北京にある中央高官の邸宅で住み込みシェフをしていたそうです。

さて、同店の絶品をいくつかご紹介しましょう。
まず、何と言っても店名にもなった「肉餅」です。「肉餅」とは牛肉や羊肉の具があるナンのことで、北方ではよくある食べ物です。具のないナンもありますが、ネギやコショウを混ぜて非常に美味しい。この牛羊の肉餅は実に柔らかくて、黒酢をつけて食べると、まさに至福のひと時です。ぜひともお勧めの一品です。

        看板料理の一品:牛肉餅

次はラム肉の串焼き(羊肉串)です。新疆ウィグルの屋台を体験したことがある人なら外せない一品でもあります。脂の乗ったラム肉に塩と唐辛子を付けて串焼きしたもので、ビールとの相性が抜群!

ここで1つ余談ですが、日本では羊の飼育が少なく、同店は看板料理の味がなかなか出せない、という大きなハンディを持っています。そこで使っているのがニュージーランド産の羊肉ですが、モンゴルの本場の羊には敵わないということです。しかし、日本はモンゴル産や中国産の羊肉は輸入できない状況が続いており、どこか突破口がないかと、馬さんが期待しています。日中間の民間交流、経済交流をもっともっと活発化した方が良いですね。

ラム肉の串焼き(羊肉串):これとビールがあればストレスやイライラが吹っ飛ぶ

三番目としては、トマト卵スープ(蕃茄蛋湯)をぜひ紹介したい。これは家庭料理そのもので、中国のレストランでもなかなか見かけません(あまり儲からない?)。この普通過ぎる一品は、ホームシックになった時にどれほど助かったか、言葉ではなかなか表現できないものです。

    トマト卵スープ(蕃茄蛋湯):脳内革命の立役者

最後に、馬さん夫婦にご登場頂きたい。二人とも内モンゴルの出身で、来日して10年以上経ちました。最初は西川口、後に池袋、そして高田馬場に移り店を切り盛りしてきました。至ってフレンドリーなお二人はいつもニコニコの笑顔で接してくれます。日本語があまり上手ではありませんが、異国の地でよくここまで頑張ってきたと、いつも感心しながら満腹して帰路に着きます。

馬さん夫婦

この頃は春学期の期末に差し掛かる時期で、いろいろドタバタしてストレスがそれなりに溜まっています。一段落したら、久々に店を訪れて、羊肉串をかじりながらゆっくり過ごすのを待ち遠しく思っています。

                                  雷海涛(2023年7月)