【天南海北】『ガチ中華に関する持論』

ご存じの方が多いと思いますが、東京のいくつかのエリアには、「ガチ中華」と称する料理店が急増しています。テレビや新聞にも時々取り上げられ、池袋・高田馬場・新宿や西川口は言うまでもありませんが、上野や蒲田などもかなり増えているようです。ちなみに、私の職場の近く(新大久保・大久保)も激戦地の一つで、ガチ中華の「兵家必争之地」となっています。

そもそも、ガチ中華とは、一体どういう店なのか?定義があるのか?前から気になっていますが、すっきりとした解釈はあまり見当たりません。以下はいくつかの定義らしきもので、いかがでしょうか?

ガチ中華と言ったら、まず四川!(筆者撮影)

定義その1
「ガチ中華」とは、日本に定着している日本人向けの中華料理と対照的に、主に中国現地で食べられているような中華料理またはそうした料理を提供する店舗のことを意味する。

定義その2
「ガチ中華」とは中国人が中国人のために作る本格的な中華料理のことで、日本人向けのアレンジがされていない本場の味を楽しめるお店を指します。

定義その3
中国語圏から来日した人が経営している料理店。中国語表記の店や、日本人向けの「町中華」とは一線を画し現地の人が満足する味付けの店を指すことも多い。

これらは厳密な定義になるか、賛否両論ですが、「中国人向けの本場料理」と「日本人向けのアレンジ中華(町中華)ではない」のが共通しています。

ガチ中華の店内(筆者撮影)

元々食いしん坊の自分は、ガチ中華のいくつかを食べ歩いてきましたが、そこで感じた特徴を以下に紹介すると、

 1)店の外観や内観は、本場中華とそっくりです。色、デザイン、調度品、などなど。
 2)どの店でも、ほとんどの店員(料理人もそう)が中国人。
 3)多くの店は、元気の良い音楽を流している。大声で話さないと聞き取れないほど。
 4)四川料理(辛い料理)が大多数。ざっくり9割近いではないでしょうか。残りは東北、福 建、西北、たまに上海小吃ぐらいで、日本人が好きな広東料理が皆無。

要は、中国に行ったことのある人から見ると、店内に入ると中国そのものという雰囲気です。

また、そもそも論ですが、この4、5年はなぜ、ガチ中華がこれほど流行ったのか、という疑問が湧いてきます。来日中国人は増えているから、あるいはその多くはふるさとの味が恋しくなるから、などの解釈が一般的ですが、どうも「決定打」ではないような気がします。以下の分析は決定打になるか、自信ありませんが、私なりの解釈だと受け止めて下さい。

そもそも東京(広く言えば日本)は、世界各地風味の「聖地」と言えます。探せばどこの国の料理もあります。これは世界他の国や地域では、恐らくないことでしょう。また、日本人の中には、一定数ですが辛いもの大好きな人がいます。これが四川料理を中心とするガチ中華誕生のベースとなり、前記来日中国人の増加や本場の味を食べたいニーズを加えて、今日のブームにつながったと思います。もちろん、これは誰かが仕掛けたのではなく、自然形成でできたのではないかと思います。

最後に、ガチ中華の今後の行方ですが、このブームはあと3、4年続くか、持続するかどうかのポイントだと思います。来日中国人だけでなく、日本人顧客をどれほど囲い込めるか、勝負どころではないでしょうか?もう一つ、個人の杞憂なのかもしれませんが、来日中国人(特に若い世代)はあまり自国同士でガチ中華の世界に「閉じ籠る」と、日本の社会から遠ざかり、折角の来日の機会は勿体ないことになりかねません。


雷海涛(2023年5月)