(関東地域レポート/川端)【日系コンサルティングの相談動向と中国対外貸付(子親ローン)規制変更の影響】

 今回の地域レポートは、永年お世話になっている日系コンサルティング会社の東京事務所を訪問しましたので、最近の相談案件などお伺いした内容を報告させて頂きます。
 また、今年3月に公布された「中国からの対外貸付(子親ローン)の規制変更」について、メガバンクのアドバイザリー部門に日本企業に対する影響を伺いましたので、併せて報告致します。

日系コンサルティング会社東京事務所訪問
 中国を中心に多くの拠点を置き、日本企業などのビジネス支援をされているコンサルティング会社の東京事務所を訪問し、最近の相談案件の傾向や日中関係の業務に対する影響などについてお話を伺いました。

(1)日系企業からの相談案件
 現在相談を受けている案件の約9割が中国現地法人の売却・撤退・減資などに関するものとなっており、製造業の中でも特に自動車関連企業から相談が多く寄せられている。
 売却や撤退に至る経緯は様々ではあるものの、海外事業を東南アジアやインドなど中国以外の国・地域へシフトさせる動きや中国における地場企業の競争力向上などが要因となっているケースが多い。
 当社としては、費やすコスト・時間・労力などを勘案し、先ずは中国内で売却の可能性を探ることにしているが、買い手が現れるのは基本的に土地の使用権や建物など資産を保有している現地法人の売却案件となっている。
 優れた技術を持つ企業の現地法人も理論上売却対象となりえるが、購入企業がその技術を活用できる場合に限られるため、売却のハードルは高くなる。
 一方、資産を保有しない貿易・販売会社などでも、現地で一定の商流が維持される場合には、既存代理店や現地法人の従業員へ売却できるケースもある。
 中国企業への売却に関しては、日本企業が中国企業のスピードに対応できるかが、案件成約の重要なポイントとなっている。
 最近手掛けた売却案件の中には、比較的規模が大きいにもかかわらず、日本の本社が中国企業のスピードにしっかり対応した結果、案件相談から10カ月で売却代金の受領まで完了できたケースもある。
 新規進出案件は現状全体の1割にとどまっているが、業種に関しては物販などサービス業が中心となっている。
 中国に初めて進出するケースでも、越境ECでの反応やインバウンド需要を踏まえ、ある程度中国市場で販売が見込めると判断した企業が多い。
  
(2)中国企業のインバウンド投資
 中国企業の対日投資に対しても日本法人の会計税務面でのサポートを中心に取り組んでいる。
 中国からの日本への投資に関しては、半導体関連企業の買収など経済安全保障に関連しそうな案件は減少しているが、それ以外の分野では不動産投資も含めて規模の大小を問わず様々な業種に広がっており、相談件数は着実に増えている。
 また当社が取り扱う案件に関しては、現状昨年の経営管理ビザ発給基準厳格化の影響は特に受けていない。

(3)日中関係の影響
 昨年11月以降、日中関係は難しい局面となっているが、現状当社の業務への大きな影響は感じていない。
 日系現地法人の売却に対して中国企業が買収に消極的になるといったマイナス影響は出ていない。
 また、中国企業のインバウンド投資に関しても、案件が減少するような傾向は現状特に見られない。

2. 中国における対外貸付(子親ローン)の規制変更
 多くの日本企業において中国事業が投資期から回収期に入る中、中国現地法人に滞留している資金の活用が課題となり、近年中国現地法人から本社やグループ会社へ貸付を行う子親ローンが資金還流の手法として広く活用されていましたが、今般その規制が5年ぶりに変更となりました。
 中国に進出している日本企業にとっては影響が大きい変更だと思われますので、メガバンクのアドバイス部門に変更内容や日本企業への影響に関して話を伺いました。

(1)規制の主な変更点
 貸付限度額を決定するマクロプルーデンス係数が0.5から0.6に変更となり、貸付限度額が拡大されることになった。
 この点では規制緩和が進んだとも言えるが、ロールオーバー(返済を伴わない借入延長)に関しては、これまで明確な回数制限がなかった外貨に関しても人民元と同様に1回までと規定された。
 また、借入企業の返済能力や資金使途、資金の流出などに関する資料の提出も求められるほか、返済義務を回避する目的でロールオーバーしてはならないと明記されるなど、運用がかなり厳格化された印象がある。

*2026年3月20日<国内企業の対外貸付管理弁法に関する通知>(銀発[2026]第63号)公布、2026年4月20日施行

(2)日本企業に対する規制変更の影響
 今回の規制変更は施行後間もないこともあり、外貨管理局での手続きや取扱いが固まっておらず各地外管局での対応にも差がある状況とのことながら、資料提出の厳格化で貸付人である現地法人に加え、借入人である本社やグループ会社における事務管理面での負担が大きくなること、また必ずしも申請した通りの金額や期間で認可が得られるとは限らないことなど、以前に比べ使い勝手が悪くなったと捉える企業が増えている。
 これまで子親ローンは配当に比べ源泉税の負担が少なく、機動的に実行できる資金還流の手段として活用されてきたが、規制変更後まだ子親ローンの認可を取得できたケースは確認できておらず、当局の対応に左右されにくい配当が改めて見直される状況となっている。

(3)規制変更の背景
 今回の規制変更には、対外貸付を実質的な海外投資として利用するなど想定された目的とは異なる事例が多発したことが背景にあると推測される。
 これまでも規制が厳格化される要因として「上に政策あれば、下に対策あり」という中国企業の行動特性に対する当局の対抗措置があったが、規制を遵守している企業はその都度煽りを受けてきた。
 近年こうした事態は少なくなっていたが、今回は過去の構図が繰り返される結果となったように思われる。
 引き続き、今回の規制変更に関する当局の対応や日本企業への影響を注視していく。

川端 良彦(2026年7月)