(九州(福岡)地域レポート/平塚)【福岡地域イベント、動向報告】

1.垂秀夫前中国大使講演会
 3月17日、内外情勢調査会福岡支部3月懇談会にて、垂秀夫前中国大使の講演を拝聴した。以下に講演骨子を取り纏め報告する。
 世界は混乱の時代にあり、米国は自国の利益最優先でイラン戦争や中米の状況を見てもわかる通り。ロシアのウクライナ侵攻はすでに4年も継続しており、帝国時代に逆戻りしたかのようで、これも自国優先である。中国は対ロ支援を継続し、習近平主席は、現在の世界秩序は公正でも合理的でもないと発言しており、現在の所謂米国主導の世界秩序を変えようとしており、戦略的チャレンジをしており、このように3大強国がいずれも自国優先の動きを見せている。このような時代に日本は果たしてどのように対応すべきか?残念ながら日本の政権は戦略的思考に欠如しており、日中関係においては失敗の歴史を繰り返している。戦略の定義とは、①目的、長期目標を持つべきで、歴代政権でこの長期目標を公言した政権はない。②手段、Resourceは限られており、優先順位が決められるべきであり、手持ちのResourceのうち何を使い、何を使わないかの判断が必要となる。③時間軸を忘れがちである。即ち戦略的手法・作法とは、ものごとを考える習慣である。
 国によって文化が違うのは当然で、特に日本は事態への対処・適応はうまいが、戦略に弱い。もぐらたたきと一緒ですべてが場当たり的対応に終始しており根本的解決ができていない。日中関係について高市首相の存立危機発言があったが、中国はこれに計画的に怒っている。要は中国共産党の正当性の拠り所は「抗日戦争勝利」であり、アヘン戦争以来列強に虐められてきた被害者意識に起因しており、その列強の一角である日本に勝ったことが共産党の拠り所である(本当は日本と戦ったのは国民党なのだが)。今でも西側諸国は中国に対する陰謀を持っていると強調すればするほど共産党の正当性が強くなると思っている。80年前に抗日戦争に勝ったことがclimaxであり、この先のepilogueとして中華民族の復光(台湾統一)があり、存立危機発言によりまた日本が陰謀論で邪魔をしている、と計画的に曲解している。自衛隊の南西諸島へのミサイル配備や元自衛隊討幕長の台湾行政院顧問就任、台湾行政院長がWBC観戦で訪日したこと等も一連の動きとして大騒ぎをしており、習主席は日本が戦後秩序を破壊しようとしていると怒っている。
 中国はいろいろと戦略的に考えているが日本社会は戸惑っている。本来中国の経済的威圧は両国双方に経済的損失が出るはずだが、日本政府には戦略がないからただ戸惑っている。
欧米リアリズムでは、①無政府状態にある国家は生存を希求する、としており、国家は道徳や理念では動かない。②国家と国家を調停する機関はない。国連は大国のエゴのぶつかり合いに過ぎない。③国家は自助努力を行うもので、そのために国防、防衛があり、同盟も自助の一つである。軍事力のバランスは平和を呼ぶはずだが、日本だけはwetで、米国を含む他国の善意に期待している。
 一方中国の戦略文化は欧米リアリズムとは根本から異なる。2500年前の孫子の時代から、最上策は心理戦であり戦わずして勝つことを最上とする。次善の策として世論戦があり法治戦があり情報戦がある。兵を動かして戦うのは最悪の愚策であるとする。実際中国共産党は台湾軍内にspyを多数忍ばせており、実際にこれらは摘発もされているが、狙いは台湾軍部内からの内部崩壊。台湾暴力団の資金源は中国だともいわれている。知謀、知略、謀略をもって認知工作を行っている。相手からの認知を変えるには時間がかかることを理解したうえで、時間軸をもって策を弄している。日本は戦略なき善意に頼ってきたが、本来国家は道徳や理念・善意では動かないことを理解せねばならない。
 第二次国共合作の際、敗け続けた毛沢東は、共産党軍の1割は日本と戦え、2割は国民党に従うふりをせよ、残りの7割は農村で力を蓄えよ、と指示を出し、時間を操り農民の認知工作を行った。続く鄧小平は、改革開放を謳い、諸外国からの資金援助を多く引き出し国家の成長のために時間を稼いだ。習近平は現在の米国主導の国際秩序を変えようとしている。米国は下降気流にあり、中国は上昇気流に乗っている。時間はかかるが必ず上昇気流が上回るときがくる。中国は米国を凌駕する。
 日本は独自の時間軸と戦略文化を構築し、中国とどういう関係を作るのかを考える必要がある。①日中友好関係の「友好」は対日工作のために中国が編み出した言葉で、日本はあらゆる面で中国への譲歩を迫られる。②全面対立は現実的ではなく無責任である。日本経済も大きな打撃を受ける。③従い、戦略的に対中管理を行うことが肝要である。但し中途半端なリスク管理は極めて危険である。

2.柯隆主席研究員
 (公財)東京財団政策研究所主席研究員の柯隆氏の談話を聞く機会があった。同氏によると、中国のGDP成長率は5%を維持しており、経済は問題ないように見えるが、不動産不況で2020年~2021年のpeak時対比不動産価格は約50~80%下落しており、差し押さえられて競売にかけられる中古マンションは600万戸に上り、16歳~24歳の失業率も16.9%にまで上昇している。中国本土の上場企業約5,400社のうち27%の1,458社は赤字で、大学卒業者の就職難、消費低迷、貧富の差拡大、一部富裕層への富の集中が起きており、ベクトルは社会不安の方向に向かっているとの判断をしている。また、人口減も著しく進んでおり、一人っ子政策時代の労働力としての男子偏重が原因で男女比に偏りがあり、今後ますます少子高齢化が進むとして危機感を訴えていた。

3.九州企業経営動向調査
 2026年1~3月期の九州企業の経営動向調査によると、2025年10~12月期対比では景況感は4.6%のマイナスとなり、物価高、人件費の上昇等のコスト高を価格転嫁できていない状況が浮かんできた。そんな中、福岡市では、中東情勢の緊迫化による中小企業並びに小規模事業者支援のため、期間一年、利率1.3%の緊急特別融資の提供を決定した。対象となるのは直近1か月の売上高か売上高総利益率が前年同期比20%以上減少した事業者を対象とし、最大1,000万円の「経営安定化特別資金」を供与する。相談から融資実行まで3週間から1か月で行うとしており、予算総枠として340億円を準備する。

4.九州7県インバウンド、2025年は過去最多
 九州運輸局の発表によると、2025年の九州7県への外国人入国者数(確定値)は2024年比16%増の581万人となり、新型コロナウイルス禍前の2018年(511万人)を上回り過去最多となったとのこと。国・地域別にみると、台湾からの入国が同28%増の81万人で過去最多だった。簡易な手続きで上陸するクルーズ船などの船舶観光上陸者数は97万人で2018年(149万人)を大きく下回った。渡航自粛による影響が懸念される中国からの2025年の入国者は2024年比36%増の125万人となっており、11月以前の勢いが如何に強かったかが見て取れる。 
 また、4月27日の九州運輸局の発表によると、1月の九州7県への外国人入国者数が1月として過去最高の前年同月比1.5%増の47万8,605人(確定値)となった。中国からの観光客は前年同月から83.3%減少し約1.6万人だったが、韓国や台湾からの観光客が約3割増加した。
 しかしながら国別にみると2026年1~3月期に九州を訪問した中国人は前年同期比55%減少しており、特に福岡市内の百貨店の免税販売の落ち込みは大きく、岩田屋三越、博多大丸、博多阪急の3百貨店合計で392億円となり、前年同期比2割減少しており、中国政府の訪日自粛要請が大きく影を落としている。

5.九州地域(特に福岡)でのインバウンド需要は引き続き堅調
 福岡空港国際線の合計便数は、2026年3月実績値2,113便(対前年比110%)、 4月見込値2,177便(対前年比105%)、5月見込値2,258便(同103%)と着実に増加している。福岡空港出入国者数では、出入国者数合計で2026年3月実績で849,959人(前年同月777,052人、109.4%)で外国人出入国者数は2026年3月の実績値で658,857人(前年同月599,215人、110%)。一方、日本人出入国者数も2026年3月実績値で191,102人(前年同月177,837人、107.5%)と純増はしている。これに伴い、福岡国際空港は運営開始後初の単年度黒字を達成し、2026年3月期は56億円の黒字(前期は10億円の赤字)となった。旅客数も前年度比6%増の2,883万人となり、3年連続で過去最多を更新した。

平塚 伸也(2026年5月)