【北京の二十四節気】冬至-北京の氷室-

●冬至-北京の氷室(2016年12月21日 スモッグ 最高気温 3℃、最低気温 -3度)

冬至になりました。皆さんはかぼちゃを食べられたかと思いますが、残念ながら、北京ではそのような風習はありません。今一番の話題は、PM2.5をはじめとする空気の悪さです。先週金曜日(12月16日)20時から本日深夜までの5日間、大気汚染の赤色警報が、華北地域全域に発令され、幼稚園・小学校は休校となり、車は半分しか走れない(ナンバー末尾の奇数、偶数で規制)等々、大騒ぎとなりました。実際、この5日間、北京のPM2.5は最大445に達し、河北省石家庄市では1,132とにわかに信じられない数字が出てきました。白く澱んだ空気が街を覆い、ひどい時には、高速道路が閉鎖となり、北京空港や天津空港などでは視界不良のため、1日100~200本以上のフライトがキャンセルになりました。環境問題が市民生活ひいては経済活動にまで影響を及ぼしています。

さて、こんな空気に負けないように、今回は氷室(ひむろ・ひょうしつ)を紹介します。

氷室は字のとおり、冷蔵庫が無かった時代に、冬に氷を貯蔵し、夏にそれを食糧の保存や食べ物に使うなどのために作られた室(むろ)です。日本でも富士山の麓などにあったと聞いたことがあります。室(むろ)と聞きますと、その語感から小さいものを想像しますが、さすがに中国では巨大なものとなります。

今回紹介します清朝末に建てられた巨大な氷室は、普通の食堂のなかにあります。100年以上前に建てられた遺構が普通の食堂のなかにあるということ自体、中国らしいといいますか、不思議なことです。この店は“皇家冰窖(bing jiao)小院”と言いまして、故宮の真北にある景山公園の近くにあり、北海公園に隣接しています。

細い胡同を入ってしばらく歩きますと、直角に曲がった道の先に、立派な赤い門が見えてきます。門の上に店名が書いてありますが、知らないとなかなか入れません。立派な門のなかに小さな門が切り込まれており、この小さな門をくぐるとやっと店の中に入ることができます。

店の奥に下に降る階段があります。この階段は3m半ほどあり、降りると氷室の中です。氷室のなかはとても広く、写真にあるとおり、中華テーブルが3~4卓は置けそうで、50名程度の宴会は問題なさそうです。

説明によりますと、この氷室は幅7.8m、長さ20m、高さ7mと大きなもので、壁の厚さは1.4mもあるとのことです。

第一の氷室の左側に人が通れる程度の門が開いており、第二の氷室に続いています。この氷室も前の室と同じ大きさです。写真の真ん中当たりに、武将の絵がかかった小さな窓のようなものが見えると思います。この窓が外と通じており、隣接した北海公園の氷をこの窓から氷室のなかに入れたそうです。

氷室のなかは、半地下になっていますから、とても涼しく、年間を通じて、一定の温度に保たれています。そのため、今では、有料で酒や食糧を貯蔵しているそうです。

この食堂のメニューには、「鄭小平主席が食べた“麻辣仔鶏”」、「中曽根首相が食べた“醤油鶏”」等があります。これは、劉という国家要人の機内食を作ったという有名なコックの伝統を継いでいるためといい、とても美味しいです。

巨大な遺構があり、料理も美味しいのですが、サービスが昔の中国なのです。写真のとおり、お客が来ても、服務員はテレビに釘付け、呼んでもなかなか来てくれません。

聞きますと、この店は個人が国有の北京市水産公司(北京市の魚介類を扱う会社)からリースしている公私連合経営方式とのことですが、サービスは全く前近代的です。

そのためでしょうか、お客が少ないのです。夏はこの場所が涼しいために、団体の観光客など、来客は多いとのことですが、これまで4回ほど行きましたが、いつもガラガラです。そして、見た限りでは、女性服務員が4~5人、若い男性が2~3人、厨房が2~3人、合わせて9~11名もいるのです。よそ事ながら、これで経営が成り立つのか心配になります。

今、中国は競争の激しい市場経済となり、伝統のある古くからの店が沢山消えています。この店も、時代の流れに付いて行けるか分かりませんが、皆さんも機会がありましたら、早めに行かれて、巨大な氷室と美味しい料理をお試し頂ければと思います。しかし、前近代的な中国式サービスにビックリされても、こちらの責任ではありませんので、悪しからずご了承願います。