このたび九州(熊本)地域アドバイザーを拝命いたしました杉本です。
熊本からいろんな情報を発信して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今回は今年熊本地震から10年の熊本の今と中国とのつながりについてご紹介します。

2016年4月に発生した熊本地震から今年で10年の節目を迎えました。
二度の震度7という激しい揺れによって甚大な被害を受けた熊本のインフラや主要産業は、単なる元への復旧にとどまらない「創造的復興」を合言葉に、力強い歩みを続けてまいりました。熊本城の天守閣完全修復をはじめとする都市機能の再生はもとより、デジタル・グリーン化を見据えたインフラの強靱化がこの10年間で急速に進展しています。
とはいえ熊本城は2052年の完全復旧を目指して工事が続いておりますし、まだまだ心の傷跡も含めて復旧は続いています。
この復興のグランドデザインが呼び水となり、現在の熊本は歴史的な経済活況の渦中にあります。世界最大の半導体製造企業である台湾のTSMCの進出を契機として、関連する国内外のサプライチェーン企業が次々と県内に拠点を新設・拡張しており、九州全体を巻き込んだ「新生シリコンアイランド」の中核として世界中から投資の視線が集まっています。今後もJASMの動向を注視していこうと思います。
熊本の中国への取り組みにおいては、私の中国とのつながりを深めることになった熊本県、熊本市、そして熊本大学の3者が共同で立ち上げた「熊本上海事務所」の存在があります。自治体だけでなく、地元の最高学府である大学が一体となり、産学官の枠組みで海外事務所を共同運営・活用している事例は、日本全国を見渡しても極めて先進的でユニークな取り組みでした。私も2011年の事務所立ち上げから4年間上海駐在を経験させて頂きました。(※現在、熊本県、熊本市の2者での運営)
事務所の役割としては熊本県内企業の中国進出サポートや中国からの投資や企業誘致、観光客誘致、留学生誘致など多岐にわたります。政治的な問題に翻弄されることもしばしばでしたが、当時の経験は今でも素晴らしい財産となっており、仕事にも大いに生かされています。地道な交流の努力は続けていくべきだと思います。
また、昨年7月には長年誘致に取り組んできた熊本上海定期便も就航したところです。(残念ながら現在運休中)。
熊本が中国において最も長い歴史と関係を誇るのが、広西壮族自治区に位置する「桂林市」です。1979年10月に熊本市と友好都市の盟約を締結し、45年以上の歳月を重ねてきました。
桂林市は、世界自然遺産にも登録されているカルスト地形特有の奇岩が生み出す景観と、そこを流れる漓江(りこう)の美しさから、「桂林の山水は天下に甲たり」と称され、国内旅行者は1.75億人、外国人観光客も150万人を超える中国屈指の観光都市です。漓江下りでは20元札の絵柄も見ることができるので是非一度足を運んで欲しいですね。
これまで両市が展開してきた交流は、行政間の形式的なものにとどまらず、教育、文化、スポーツ、さらには公衆衛生・医療技術の相互支援など、市民レベルの草の根交流へと深く根を張ってきました。



次に江蘇省に位置する「蘇州高新区(蘇州国家ハイテク産業開発区)」との交流です。熊本市と高新区は2013年5月に交流都市協定を締結しました。
蘇州高新区は、中国政府が国家レベルで開発を牽引してきた最先端のハイテク産業集積地であり、IT、精密機器、バイオテクノロジー、そして半導体関連企業が世界中から集まる経済のトップランナーであり、日本企業だけでも600社を超えています。
協定締結以降、両市は経済貿易セミナーの定期開催や、双方の企業で構成される企業視察団の相互受け入れを積極的に展開してきました。またビジネス交流にとどまらずマラソン交流、修学旅行誘致やLRTの技術交流など双方向の関係を築いてきました。



中国本土の都市とのネットワークを深める一方で、現在の熊本の「半導体バブル」と直接連動し、急速にその緊密さを増しているのが、台湾南部の主要都市である「高雄市」との交流です。熊本県・熊本市と高雄市は、2013年9月に熊本県・熊本市・高雄市の3者で国際交流促進覚書を締結(2017年1月「熊本県・熊本市・高雄市友好交流協定」締結)以来、深い絆を築いてきました。高雄市は台湾最大の港湾都市であると同時に、近年は最先端半導体産業を誘致し、工業都市からハイテク都市へと劇的な変貌を遂げています。特にTSMCが台湾国内の拠点を高雄市に置いており、同じくTSMCの進出に沸く熊本とは、半導体で結ばれた都市でもあります。両市の交流は、TSMCの進出決定以降、単なる観光や文化の相互訪問に加え「実務的な産業連携」へと深化しています。また、熊本高雄間の定期直行便の運航も始まり、ビジネスマンや観光客の往来が増加しており、経済・インバウンドの両面で地域に恩恵をもたらしています。


熊本地震からの10年間、熊本は単に復興だけでなく、世界最先端の産業を迎え入れるための都市基盤と経済の強靱さを獲得してきました。中国本土と台湾の双方に構築されたこれら多角的な都市間交流は、熊本が東アジア全域における国際投資都市として、持続可能な成長を遂げるための土台にもなっています。
熊本は今、東アジアにおける最もダイナミックなイノベーションの実験場へと進化を遂げていますので、九州熊本と中国とのさまざまな交流を大切にし、発展させていくことが重要であると考えます。
杉本 幸生(2026年5月)
