(関西地域レポート)【2026年の関西経済と中国との関係】

 年明けに際し、新年の関西経済に対する展望が伝えられています。特に中国との関係について、松本正義・関西経済連合会会長は『日本経済新聞』のインタビューで、関西の対中貿易依存度の高さによる影響に言及されつつ「我々は長きにわたって中国と交易してきた。経済界としてはこの関係をキープしていく責任がある」[1]と表明されました。今回は、「2026年の関西経済と中国との関係」について、近畿経済産業局によるデータ分析や関西の代表的シンクタンク・APIR(一般財団法人アジア太平洋研究所)の研究成果などから、私の視点で抽出・整理し、読者の参考に供したいと思います。

◆近畿経済産業局「近畿経済の動向」
 近畿経済産業局からは、毎月中旬頃に「近畿経済の動向」が公表されています。2025年12月22日と2026年1月22日のそれは、それぞれ2025年10月と11月の指標実績をレビューし先行きの見通しを示したものでした。中国との関係が懸念されるなかでも、表1の通り、貿易は堅調のようです(変化は表1中の下線部分)。

表1 25年12月と26年1月の「近畿経済の動向」の概要比較

 25年10月指標を中心として25年11月指標を中心として
全体(総括判断、冒頭の要約)〇一部に弱い動きがみられるものの、緩やかに持ち直している。
〇先行きについては、物価上昇の影響、人手不足や賃上げの動向、為替の変動、米中をはじめ海外経済の動向を注視していくことが必要である
〇一部に弱い動きがみられるものの、緩やかに持ち直している。
〇先行きについては、物価上昇の影響、人手不足や賃上げの動向、為替の変動、海外経済の動向を注視していくことが必要である
生産弱含みで推移弱含みで推移
個人消費物価上昇の影響がみられるものの、緩やかに改善している物価上昇の影響がみられるものの、緩やかに改善している
設備投資増加している増加している
住宅投資弱含みで推移弱含みで推移
公共投資請負金額は前年同月を上回った請負金額は前年同月を下回った
貿易輸出は前年同月を上回った輸出は前年同月を上回った
雇用緩やかに持ち直している緩やかに持ち直している
倒産件数は前年同月を上回っ件数は前年同月を下回った

(出所)令和7年12月22日「近畿経済の動向(過去の公表資料)」
https://www.kansai.meti.go.jp/1-7research/doukou/bn/kannai202512.pdf
令和8年1月22日「近畿経済の動向(2026年1月~11月指標を中心として~)」、
https://www.kansai.meti.go.jp/1-7research/doukou/bn/kannai202601.pdf

◆対中貿易(輸出)依存度
 近畿圏の貿易の堅調さのなかで、対中貿易はどうなのでしょうか。具体的データを大阪税関・財務省貿易統計[2]によりみると、2025年12月分の近畿圏(大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山の2府4県)の中国向け輸出(速報値)は月別過去最高額で4カ月連続のプラス(対前年同月比+14.3%)、輸入は2カ月連続のプラス(+19.3%)となり、年間では、輸出入ともに2年連続のプラスで、輸出は2.5%の伸び、輸入は5.6%の伸びでした。対中輸出の増加品目としては「半導体等電子部品」、対中輸入の増加品目としては「がん具及び遊戯用具」が挙げられています。
 また、従来から指摘されている関西の対中貿易への依存度についてみると、関西(上記の近畿圏)の世界への輸出額における対中輸出額の割合は、2020年の26.8%をピークとして次第に低下傾向にあり、2025年(速報値)は23.3%となりました。一方、日本全体のそれとを比較すると、趨勢は類似しつつも、関西は依然として高く、両者の格差がやや広がる傾向もあるようです(図1)。

図1 日本全体と関西の世界への輸出における対中輸出割合の推移

(出所)財務省貿易統計 https://www.customs.go.jp/toukei/suii/html/time.htm と同速報値https://www.customs.go.jp/toukei/latest/index.htm および大阪税関貿易統計(近畿圏の貿易統計)https://www.customs.go.jp/osaka/toukei/01_kinki.html
(参照)一般財団法人アジア太平洋研究所(APIR)『アジア太平洋と関西 関西経済白書2025』

◆中国経済の課題認識
 また、近畿経済産業局では近畿管内の大企業・中小企業等を対象に定期的なヒアリングを実施しており、前述の「近畿経済の動向(2025年12月 ~10月指標を中心として~)」を補完するものとして「管内企業の声からとらえる景況感と今後の見通し~2025年下期 近畿地域の地域経済産業調査結果~」の取り纏めが2026年1月に発表されています[3]。そのなかでは、管内の製造業企業から、以下のような声があがっていました。
《近畿管内・製造業企業の声(例)》
 ①(2025年10~12月期の「生産状況」を「下向き」とする声として)中国の景況感が悪く、売上げが伸び悩んでいる。
  日本製品は高級品という扱いのため、景況感が悪くなると現地製品との価格競争で負ける。【金属製品】
 ②(2026年1~3月期の「生産の見通し」を「変化なし」とする声として)中国の安値輸出の先行き不透明等により、横ばい
  又は若干マイナス。【鉄鋼】
 上記①②はいずれも、今後の対中貿易のマイナスの影響を推測させる声でもあり、また「中国の景況感の悪さ」、「安値輸出の先行き不透明等」といった中国経済の課題認識が、申すまでもなく関西企業の事業動向と密接不可分であることを表している例と言えそうです。

 そこでここでは、関西企業の事業動向の予見性向上に向けて、最近の中国経済課題についての関西の代表的研究者お二人の論点を紹介しておきたいと思います。
 お一人目は福本智之・大阪経済大学教授です。福本教授は2026年初、大阪市内での「Think Asia Seminar(華人研)第184回」[4]において「中国経済の行方─『弱さ』と『強さ』の意味すること」と題する講演を行われ、中国の景気が2025年後半にはっきり減速している一方、外需は予想以上に健闘していることにも言及しつつ、深刻な不動産不況が地方財政と消費にも影響し内需の低調を招いている中国経済の「弱さ」を分析されました。有効需要不足が認識されつつも供給力重視のままであることが中国の「第15次五カ年計画建議」の課題とみられています[5]
 もうお一人は梶谷懐・神戸大学大学院経済学研究科教授です。上記の課題に関して、発表時期は相前後しますが、APIR(一般財団法人アジア太平洋研究所)から2025年10月に発行された『アジア太平洋と関西 関西経済白書2025』での「中国経済:消費拡大策はトランプ関税の衝撃を和らげるか」において、梶谷教授は、「改革派のテクノクラートとして知られる前財政部長の楼継偉氏」や、「やはり改革派の金融テクノクラートとして知られる前中国銀行保険監督管理委員会主席の郭樹清氏」の発言を例にあげ、「これまで発言を控えがちだった改革派の政治家・経済学者たちが口を開き始め、活発な政策論議が行われつつあることが、中国が供給サイドへの投資に偏りすぎた国内の資源配分を是正し、最終需要の拡大を目指す政策に大きく方向を転換する兆しであることを期待したい」との見解も示されました。
 こうした論点をも念頭に、今後の中国経済の客観的かつ実証的な分析を、継続的に関西に根差してフォローしていきたいと思います。
 また、中国との関係において懸念され、2025年12月の中国からの来阪者数が前年比45%減との推計[6]も明らかにされているインバウンド観光や人的交流についても、回をあらためて考察する所存です。


[1] 〈展望2026関西〉関経連会長・松本正義氏「経済界、日中交流保つ責任」万博レガシーの波及、国際知名度を観光に活用 『日本経済新聞』(地域経済 関西経済14ページ)2025/12/25
[2] 大阪税関・財務省貿易統計 2025年12月分https://www.customs.go.jp/osaka/toukei/pdf/gaikyo_202512.pdf
2025年(速報)https://www.customs.go.jp/osaka/toukei/pdf/gaikyo_2025.pdf
[3] 近畿地域の地域経済産業調査(2025年下期の定期ヒアリング調査):
・調査目的:地域企業の景況感や設備投資、雇用状況等、近畿経済産業局管内の経済情勢の把握
・調査方法:職員による訪問ヒアリング(一部オンラインや電話・メールによる対応あり)
・調査期間:2025年10月下旬~12月中旬
・調査対象:近畿経済産業局管内の産業構造等を勘案した約100社・団体(公的機関を含む)
・主な調査項目:①足下の業況(2025年10~12月)及び今後の見通し(2026年1~3月)、②設備投資、③雇用状況、④米国関税政策の影響、⑤大阪・関西万博についてhttps://www.kansai.meti.go.jp/1-7research/chiiki/downloadfiles/202510-12kekka.pdf
[4] Think Asia Seminar(華人研):中国・アジア・世界の歴史・文化に関する実践的な知見を学び、それを日々の業務や活動に活かすことを目的とした、非営利・自主運営の研究会。原則毎月第2土曜日午後に大阪市立生涯学習センターで開催。代表は当機構特別アドバイザーの井上邦久氏。https://kajinken.jp/%e6%9c%80%e8%bf%91%e3%81%ae%e4%be%8b%e4%bc%9a/
[5] 詳細は、福本智之・大阪経済大学教授の論稿「低調が続く中国経済、その背景と回復の糸口とは」『日中経協ジャーナル』2025年12月号(令和7年11月25日、一般財団法人日中経済協会発行)もご参照ください。
[6] 大阪観光局 2026/01/26「来阪訪日外客数推計(1月発表)」 https://octb.osaka-info.jp/