(東海地域レポート)【第5回地域レポート】

1. 東海日中関係学会 2026年新春公開研究会
 1月24日(土)、中統奨学館ビルにて、東海日中関係学会の新春公開研究会が開催され、参加した。

 第1部では、中国駐在を終え、帰国して間もない石井宏樹・中日新聞経済部記者(前中国総局長)から、「コロナ後の中国経済と日中関係」のテーマで、中国経済・産業の光と影、深刻な少子高齢化と社会の軋み、日中関係の現在地と展望について講演。ゼロコロナの後遺症や不動産不況、EV過剰生産、少子高齢化などの構造的な問題を抱える一方、生成AIと自動化のダイナミズムなど、日本企業が失った変革のスピードや仕事への貪欲さといったところが盛り込まれた現場感あふれる講演内容だった。また、日中関係が悪化している中、政治は「冷」だが、海外を知る人ほど今の政治状況を冷静に受け止めており、民間レベルでの交流の重要性をあらためて理解できた。

 第2部では、「日中対立の現状と見通し」のテーマで、川村範行・東海日中関係学会会長(名古屋外国語大学名誉教授)らが、高市首相発言をきっかけとする日中対立の背景と打開の糸口について講演。
川村会長からは、高市首相発言に関し、学会として中立の立場から、昨年11月26日に「日中関係の悪化を憂慮し、早期の関係修復を求める声明」を日中両国政府宛てに緊急声明として発表し、併せて記者会見を開いたことについての報告があった。声明では、「対話と協議による外交努力」、「戦後80年間の不戦・平和の維持」、「速やかな外相会談、防衛相会談ほか政府間協議の開催」、「戦略的互恵関係の推進による安定的、建設的な日中関係」、「不測の事態を避ける」の5項目を挙げ、対立の打開に向けた提案を行った。東京の別の学会や団体も賛同し、当学会の声明文を下地にそれぞれ声明を発表している。

 東海地区では、日中関係の悪化により、毎年1月開催の日中友好イベント「名古屋中国春節祭」が延期。経済や民間交流などへの影響の他、今秋、愛知県内を中心に開催される「アジア・アジアパラ競技大会」への影響も心配されている。厳しい日中関係ではあるが、民間の力で関係を継続する努力が重要だと考える。

2.東海企業の海外進出状況
 中部経済新聞電子版 2025年12月16日(火)より抜粋

東海企業の海外進出率低下 不確実性増大で、帝国データ調査
 帝国データバンク名古屋支店がまとめた東海4県(愛知、岐阜、三重、静岡)企業の意識調査(有効回答1141社)によると、直接・間接いずれかの形で海外進出している企業は20.9%となり、コロナ禍前の2019年に比べて7.8ポイント低下。地政学リスクの増大など「不確実性の増大が海外進出に対する企業のマインド低下を招いていると考えられる」(同支店)結果となった。重点地域は中国が「生産」「販売」ともトップだが、重要度での落ち込みが目立っている。

 海外進出状況(複数回答可)では、「生産」や「販売」の拠点などで直接進出している企業は12.6%、業務提携や輸出など間接的に進出している企業は14.9%だった。

 現在進出している国・地域の中で生産拠点として最も重視しているのは①中国(15.9%)②ベトナム(8.4%)③タイ(6.7%)④その他アジア(3.3%)⑤米国(2.9%)の順。販売拠点として最も重視しているのは①中国(15.9%)②米国(6.7%)③タイ(5.9%)④ベトナム(5.9%)⑤台湾(4.2%)の順。「生産」、「販売」とも中国がトップだが、中国の重要度は19年に比べ、「生産」で8.6ポイント、「販売」で11.7ポイント、それぞれ低下した。

 また、今後の拠点として検討する可能性がある国・地域では、「生産」が①ベトナム②中国③タイ④インドネシア⑤インド、「販売」が①中国②米国③ベトナム④インド⑤タイの順。GDP(国内総生産)成長率が高く、安定したビジネス環境が望めるベトナムや、世界最大の人口を誇るインドなどアジア新興国への期待感が高まっている。

 一方、同時調査した「米トランプ関税による海外進出への影響」では、58.8%の企業が海外進出に対して進出先の見直しやコスト増など、何らかの影響が生じると認識していたことが明らかになっている。

 同支店では、「海外とのビジネス強化は日本経済の発展・拡大のためにも不可欠。企業が自力で対応困難なカントリーリスクに関する詳細かつタイムリーな情報提供など、政府・自治体・公的機関による多岐にわたる支援が重要だろう」と指摘している。

内山 仁宏(2026年1月)