5月24日(土)、日中関係の研究と交流に取り組む「日中関係学会」の全国大会が、名古屋市の「ウインクあいち」で開催されました。当大会には、オンラインも含めて計約90人が参加し、小生も会場で参加しました。
「激動する世界と戦後80年の日中関係」が総合テーマで、当学会副会長・東海日中関係学会会長の川村範行 名古屋外国語大学名誉教授のあいさつの後、当学会会長で東京大学の高原明生名誉教授、李春利 愛知大学国際中国学研究センター所長・教授、衛娣 周南公立大学講師が記念講演を行いました。
高原名誉教授は、「トランプ政権の再来と中国」との演題で講演され、トランプ政権の(当面の)対中政策(経済)について、5月10、11両日にスイス・ジュネーブで行った米中貿易協議で、相互の関税率を一定期間引き下げることで合意したことを紹介(145%対125% → 30%対10%)。追加関税引き下げの要因として、米国側は、①大富豪政権は経済利益を重視、取引を追求、②レアアース輸出規制の痛み、③廉価商品入荷できず、物価上昇の恐れ、④米国債市場への影響の恐れ。中国側は、⑤輸出業者の経営困難、⑥外需、FDI停滞、を指摘し、米政権内のデカップラーとディールメーカーの綱引きが今後も継続する見通しであることを示されました。また「中国の対外政策」については、「一つの中心、四つの基本点」と表現され、中心課題は米国との競争に勝つこと。四つの基本点は、①対米関係の当面の安定化、②ロシアへの支持、支援、③日欧韓豪印などへの接近、④グローバルサウスへの接近。対米関係は当面、安定化を図る一方で、ロシアとは矛盾があっても相手を必要としているので支え合い、日本やヨーロッパと協力し、できれば米国との間に楔を打ち込み、グローバルサウスの支持を広げていくと分析されました。
李所長は、「ヴォーゲル文庫から見たアジア・中国研究」、衛講師は、「ヴォーゲル文庫の概要~データ分析~」の演題でそれぞれ講演されました。ハーバード大学名誉教授であるエズラ・ヴォーゲル氏(Ezra F. Vogel、中国名:傅高義)は、日本では1979年に出版されベストセラーとなった『ジャパン・アズ・ナンバーワン』や、『現代中国の父 鄧小平』の著者として有名であり、中国や日本などの東アジア関係の研究に従事した世界的な権威でもありますが、2020年に逝去されました。2022 年 にエズラ・ヴォーゲル夫人のシャーロット・アイケルズ教授から愛知大学に対して、故エズラ・ヴォーゲル蔵書の寄贈の申し出があり、約1年後の2023 年 11月に故エズラ・ヴォーゲル蔵書と資料を合わせて約3,600点が愛知大学に寄贈されました。今年7月12日(土)に、「第3回エズラ・ヴォーゲル記念フォーラム」が愛知大学名古屋校舎で開催されますので、ご関心のある方は是非参加していただきたいと思います。
◆参加申込方法:愛知大学ICCSホームページ
愛知大学国際中国学研究センター(ICCS) 第3回エズラ・ヴォーゲル記念フォーラム | イベント | 愛知大学国際中国学研究センター
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内山 仁宏(2025年5月)