(九州地域レポート)【九州地域レポート(2026年3月)】

  1. 在広州日本国総領事・貴島善子氏講演
    2026年2月20日、九州経済フォーラム令和7年度特別講演会にて、在広州日本国総領事・貴島善子氏による「中国最新情勢と日本 -広東・広州・深圳から見る中国のイノベーション力、グローバル展開力-」と題する講演会に出席した。まさに現在の中国の現状、特に中国経済の強さと弱さのうち弱さにスポットライトを当て本音で語っていただいた90分間で、大変内容のある講演で聞き応えがあった。詳細についてはオフレコにしてほしいとの要請だったが、現下の情勢にあっては、自身中国で政府関連機関とはアポも取れないし好き嫌いで語るべきではないが、「中国恐るべし!」の言葉がぴったり当てはまるとの感想を持っている、とのお話しだった。現在の中国は、既に「模倣者」ではなく、技術では完全に世界をリードしている実態があり、日本が未だに4Gだ5Gだと言っている現在、中国では既に6Gでは足りず7Gの実用段階に入っているイノベーションの力を握っており、深圳や広州で実用段階に入っている空飛ぶ宅配や空飛ぶタクシーを筆頭とする低空経済についても、国に先行して地方と民間が突っ走って開発している状況で、これを後追いで中央政府が「低空経済に力を入れる」と発言した途端、これまで何の関連もなかった地方政府や国営企業が中途半端な資金を注ぎ込むことになり、悲惨な結果が見えている、との予測もあるとのこと。中国の自動車業界や大規模農業の現状についても語っていただいたが、良い意味でも悪い意味でも行き過ぎた過当競争により、強いものはますます強く、弱いものはますます弱くなる構図が出来上がっている。好き嫌いではなく、我々の隣国としてこういう凄い国があることを認識すべきであり、現在はまだ中国内の「わかっている人たち」は日本への尊敬の念はあるが、日本の対応次第では日本への無関心が広がってしまうことを危惧している、との発言があった。「愛」の反対は「嫌い」ではなく「無関心」であると。

  2. 軍民両用品目の輸出管理の影響
    九州経済全般に言えることだが、中国からの軍民両用品目の輸出管理を強化したことへの対応としては、36.4%の企業が中国依存を低減したり、中国への渡航自粛を検討している企業も30.8%に及ぶ。ただ、経済界全般において企業にとってコスト削減や安定操業の面で中国とのビジネスのメリットが乏しくなっているとの見方も多くなっている模様。

  3. TSMC熊本第二工場
    台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県菊陽町で建設を進める第二工場について、停止状態にあった工事が再開した。25年12月頃から現場では「動きの鈍化」が確認されていたが、本年2月5日、高市早苗首相とTSMCの魏哲家会長兼CEOの会談において、第二工場を当初想定されていた自動車やIoT向けの6〜7nm品から、より高性能なAIチップ向け3nm品のプロセスへアップグレードする方針が示されたこともあり、クリーンルームの仕様再定義や製造装置の選定を抜本的に見直す必要が生じ、建屋設計や基礎条件にも影響がおよんだ模様。3nm対応への変更は、生成AIやデータセンター向け半導体需要の急拡大が直接の引き金となったとの見方が強く、3nm品へとターゲットを転換することで、投資効率と戦略的価値を最大化する狙いがあるものと思われる。3nm対応という日本の半導体政策の中核を担う計画だけに、今後の工程や稼働時期については慎重な情報開示が続くとみられる。

  4. インド商工会議所連合会(FICCI)と九州商工会議所連合会で覚書締結
    3月10日、在福岡インド総領事館で両国の貿易や投資に関する情報共有を進め今後の商談や企業交流を円滑化する基盤づくりに共同で取り組むため、経済交流に関する覚書を締結した。在福岡インド総領事館の開設以来、ラムクマール総領事を筆頭に総領事館の動きは非常に積極的で、両地域における貿易の促進やビジネス関係の深化に向けて協力関係を深めるとしており、ビザ取得の円滑化でも協力する。FICCIでは九州の強みである製造業や半導体関連産業、クリーンエネルギーとインド産業の先進性、持続性を合わせることで互いに発展できるのではないかと期待しているとのこと。FICCIは1927年設立のインド最大の経済団体で、8,000社以上の直接会員と25万社以上の間接会員で構成している。

  5. 楊慶東在福岡中国総領事に退任挨拶
    3月23日、小生の福岡貿易会専務理事退任に当たり、楊慶東総領事に退任報告と時事に関する意見交換を行った。高市首相発言以降の日中関係については改善が見られぬ状況下にあっても、日本特に九州経済にとっては、中国との関係は切っても切り離せないものであり、政府間関係とは別に民間での経済交流は引き続き強固なものとしていきたい旨を確認した。これまでのご厚誼に御礼申し上げたうえで、総領事館側も商務部領事の人事異動で、これまでお世話になった王伝東部長の札幌転勤に替わり、大使館から張涛新部長の着任があり、今後も情報交換できるよう好関係維持を約した。

  6. 福岡-中国の航空便半減
    日本経済新聞の報道によると、2月15日からの春節休暇を前に、中国政府による日本への渡航自粛要請の影響が明らかに出てきている。福岡空港や博多港では、中国発着の航空便やクルーズ船が相次ぎ取り止めとなっており、一部の個人旅行客を除いてはホテルでも中国からの団体客の予約が減少している。韓国や台湾からの観光客が伸び、インバウンド全体では好調を維持しているが、福岡空港では中国との航空便は本来週57便予定されていたが、多くの運休の為、2月5日現在では週25便と半分以下となっている。特に中国国際航空は福岡-北京、福岡-上海便について、10月24日までの運休を発表しており、再開の見込みは立っていない。クルーズ船も大幅減便で、1月に博多港に寄港したのは韓国発の2隻のみ(前年同月は16隻)だった。

  7. 九州地域(特に福岡)でのインバウンド需要は引き続き堅調
    上記の通り、中国便が半減している中でも福岡空港国際線の合計便数は、2026年1月実績値2,070便(対前年比109%)、 2月見込値1,844便(対前年比107%)、3月見込値1,902便(同110%)と着実に増加している。福岡空港出入国者数では、出入国者数合計で2026年1月実績で821,943人(前年同月725,426人、113.3%)で外国人出入国者数は2026年1月の実績値で707,069人(前年同月620,107人、114%)。一方、日本人出入国者数も2026年1月実績値で114,874人(前年同月105,319人、109.1%)と純増はしているが、2018年同月比では70.5%にとどまっているのが現状。
    ただ明るいニュースとしては、本年7月1日より、マカオ航空が福岡-マカオ便を期間限定で週3往復の運航再開することを発表し、2020年3月の運休以来、約6年半ぶりの運航開始となる。

  8. 垂秀夫前中国大使講演会
    3月17日に垂秀夫前中国大使の講演会を聴く機会があったが、大変興味深い内容だったので、詳細を次回レポートで報告したい。

以上
平塚 伸也(2026年3月)