中国のWTO加盟と今後の経営環境について 

別表の「WTO関連の法規・措置変更の現状と見通し」に基づいて、中国のWTO加盟による今後の経営環境変化の見通しについて、報告する。

加盟と同時に変更されるものとしては、「各種法規・措置実施における透明性・統一性確保」が挙げられる。具体的には、貿易、知的財産権保護、外貨管理などに関する法令や措置を実施する際は、必ず公表し、それを統一的、公平かつ合理的に行うということが約束されている。

90年代半ば以降、外資に関わる政策が大幅に調整され、毎年のように新しい法規・措置が実施されたが、その中で多くの進出企業から、「実施が突然」、「詳細がわからない」、あるいは「地方や企業によって扱いが違う」といった問題が指摘されてきました。増値税輸出還付問題や外貨管理強化、加工貿易輸入保証金制度実施など、多くの例が挙げられる。

これに関しては、加盟直後の昨年12月中旬、国務院から「法規規則届出条例」が公布されている。これは、中央各部門と地方が制定した全ての法令について、一律に国務院に届出をし、その審査を経て適正と認められたものは公表され、そうでないものは差し戻されるというもので、透明性や統一性の点で改善されることが期待される。ただ、実際にどうなるかを今後注視しておく必要があると思われる。

次に、外資企業への各種要求の廃止が約束された。これは、WTOのTRIM協定で禁止している国産化要求や輸出入均衡要求を廃止し、同時に輸出要求や技術移転要求など一切のパフォーマンス要求を廃止するというもの。

従来、自動車や携帯電話、カメラなどで国産化が義務づけられ、また多くの企業が一定の輸出を認可条件とされてきた。これがなくなるわけで、企業にとってはより自由な経営判断ができることになる。これについては、加盟交渉の早い段階で中国側が約束していたことから、加盟前に合弁法などの外資三法が改正され、関連条項が削除、修正されている。

法改正以降、多くの進出企業が、定款などに記載している輸出比率や国産化比率の変更を政府に申請を出しているが、これが自動的に認可されているのかどうかが、注目される。

3点目は、知的財産権保護に関する法制度の整備。具体的には、TRIPS協定を遵守すること、即ち、特許法や商標法など関連法規の改正・制定、権利行使のための各種措置の実施、また一般人への教育・啓蒙を行うことなどが約束されている。

関連法規の改正・制定は既に終わっており、概ねWTOルールに整合的な内容になったと言われるが、但し、模倣品の横行は最近になってむしろ深刻化しており、行政の運用や取り締まりが今後どこまで進むかが注目される。

次に、今後数年で変更されるものの中で、特に注目される貿易権と流通制限の撤廃について紹介したい。

貿易権については、加盟時から輸出などの実績を認可条件としないこと、外資系企業に対しては、加盟後1年以内に外資マイノリティの合弁企業、2年以内に外資マジョリティの合弁企業、3年以内に独資企業を含む全ての企業に付与すること、同時に、特定の企業形態や独立の企業主体を設ける必要はなく、かつ営業許可も必要としないこと、が約束されている。但し、貿易権は輸出入に関する権利であって、流通については別に定める約束に従うとされている。
そこで、流通に関する約束だが、加盟文書の別のところで、外国製品の流通という言い方で条件が規定されている。例えば、 卸売業については、若干の制限品目を除いて、加盟後2年以内に外資マジョリティによる合弁を認め、同時に認可地域の制限や認可数の制限を撤廃すること、3年以内に独資も認めることが約束されているなど、貿易権も流通も3年以内に基本的に開放されることになっている。

但し、この間の具体的なスケジュールや認可条件は規定されていない。進出企業には、親会社などの製品を輸入して、販売したいというニーズが強いが、3年以内の間に貿易権を与えられたとして、輸入した製品をどうやって販売することができるのか、それがわかっていない。これに関する法令の制定が注目される。

なお、多くの企業が関心を寄せている外資優遇措置の扱いについて、簡単に説明する。

WTOの基本原則の一つは内国民待遇ということで、これを実行しようとすれば必然的に外資のみに対する優遇を廃止することになるという見方があるが、WTOルールでは外資優遇措置については特に規制を設けていない。内国民待遇は、外国企業・外資系企業に対して国内企業よりも不利でない待遇を与えるというのが定義とされている。

この点、中国政府は、基本的な外資優遇の方針は変えないと度々言明している。ただ、企業所得税については、現在、外国企業・外資系企業向けの税法と国内企業向けの税法が併存しており、近い将来、これを統一することを明らかにしているが、既存の外資系企業には相当長期間にわたって現行の優遇措置を適用するとしている。

総じて言えば、日本企業、日系進出企業にとってWTO加盟後の今後の経営環境は制度面では改善される、それも短期間で劇的に改善されるように思われる。それによって、ビジネスチャンスが拡大し、今後は直接投資だけでなく、中国へのモノや技術の輸出、中国企業との生産・販売面での様々な提携など多様なビジネスが可能になることが予想される。

しかしながら同時に、競争が更に激しくなることが確実視される。

こうした中で、進出企業としては、如何にして競争に打ち勝つか、が喫緊の経営課題となっていくものと思われる。


以上

(池上隆介)