中国における今後の会計制度と税制、さらにM&Aについて

 中国では最近企業会計制度が改正され内外統一の方向性が明確にされた一方、税制についても内外企業所得税統一の検討、優遇政策の改廃について検討がなされています。また国有企業買収に関する法律についても最近相次いで整備されています。これら法律整備の背景・方向性、また実行にあたっての問題点について、当機構の活動に日頃強力なご支援をいただいております近藤義雄公認会計士(近藤公認会計士事務所)にお聞きしました。


会計制度、税制における最近の変化について

(事務局)
 最近中国では会計に関する法律が整備されていますが、その背景を教えてください。

(近藤会計士)
 中国が従来の社会主義会計から資本主義会計に切り替えたのは1992年で10年ほど前になりますが、その背景として、当時既に国有企業の改革の必要性が叫ばれており、中国政府としては改革のためには海外の力が不可欠という認識は既に持ってはいたものの、そのためには国際会計を早急に取り入れなければ立ち行かないという危機感が非常に強かったのです。92年に国際会計基準導入の基礎となる企業会計準則を制定し、その後続けて16の準則を発表しましたが、この92年が中国にとって国際会計基準導入のスタートとなった年であるといえます。2001年からは国際会計基準に準拠した企業会計制度も整備され、中国上場企業、外商投資企業、新たに設立される中国企業に適用されるようになりました。
 中国の会計制度は国際会計基準に準拠しているといいましたが、もちろん中国独自な部分も組み込まれており、例えばリース会計の処理がよい例です。総じて見てみると理論だけでなく現実に合った部分も採用しており、中国として自国の会計制度を作り上げてきているという印象を受けます。

(事務局)
 税法に関する整備状況はどうでしょうか?

(近藤会計士)
 税法の改革については会計制度と比較するとまだ遅れています。中国の税制は改革開放政策以降、外資導入のために外商投資企業向けの渉外税法を整備しましたが、このとき国内企業向けの税制はまだ整備されていませんでした。94年に流通税、個人所得税は内外統一されましたが、企業所得税は現時点でも統一できていません。企業会計制度がほぼ統一された現時点でも、税法について言えば、税引き前の原価と費用を損金として認める損金算入基準(税前控除規則)が中国企業と外商投資企業で異なる取り扱いとなっているのが現状です。
 また、開放当初は、外商投資企業は外商投資企業独自の経済活動を行っていればよかった。内資企業についてもしかりです。しかし、外商投資企業と内資企業がいろいろな経済的関わりもつようになったこと、また国有企業改革が進まなかったので、外資に買収させようという政策転換がなされましたが、いざ買収させるという段階で国有企業も外商投資企業も同じ土俵で税法と会計を考える必要がでてきています。従い内外税制統一は緊急の課題となっており、2003年11月18日の「中国税務報」でも、中国の税制改正について7つの重要な変更について触れています。この内容を見ると、企業所得税についても納税者の統一など改正の必要があるとなっています。つまり、企業活動の根幹になる税制についても内外差別を続けることが既に実情に合わなくなっていることを中国当局もよく認識しているのですが、実際の改正となるといろいろ問題があり、まだ実施に至っていないというのが現状です。

(事務局)
 日系企業の間では、今後外資優遇税制がどうなるか非常に関心が高いところですが、この点どうなっていくとお考えですか?

(近藤会計士)
 中国国内では内資企業よりも外商投資企業が優遇されているという不満が強くあり、現状の不公平税制は是正せよという動きもあります。税制については、対外開放以降、中国企業をどうやって育成すべきか、国有企業改革をどうやって行うべきか、また自国産業をどのように育成するかという考えがベースになっています。
 確かに現在、外商投資企業はいろいろな面で税制優遇を受けていますが、内資企業についても独自の税制優遇があり、外商投資企業に対しては明確になっていない税前控除規則が明確になっているなど、自国産業育成という観点からそれなりの優遇を受けています。現在、企業所得税法は内資企業向けと外商投資企業向けは全く異なる法律で規定されており、両者は全く関連性がありません。もちろん優遇税制についても全く別体系になっている。こういった法体系の不統一からくる矛盾が、経済発展の阻害要因となってしまっているのが実情です。細かい取り扱い規定まで含めてすべてを統一するには、かなりの改革作業が必要になります。しかしながら、統一すべきところは統一せねばならないというのが根本の考えになります。現政権の考え方は、安定した持続的成長を最優先し、その阻害要因となっているものを最小限の改革により取り除くという政策が見られますので、現状の外資の優遇政策について、当局としてそれが経済発展の阻害要因にならないと考えるのであればそのまま継続するものも出て来るかもしれませんが、内資であれ外資であれ企業として基本的な部分は統一されるべきだと思います。将来、内資企業、外商投資企業を跨いだ資本関係も増えてくるのは必然で、早急に税法を統一しないと無理が生じてくると思います。

(事務局)
 会計制度、税制の制度については、これまで整備され、また今後もより整備される方向性であることはわかりましたが、実際の運用面はどうなのでしょうか。例えば税法については地方によって運用が違うという声をよく聞きますが、その点今後どうなっていくのでしょうか。また会計制度については決められた規則に従って実際に報告できるレベルにあるのでしょうか。

(近藤会計士)
 それは難しい問題だと思います。税制の地方による運用の違いは、問題を突き詰めれば、中国が中央集権的国家なのかあるいは地方分権的国家なのかという政府のありかたに行きつくかと思います。
 税法について地方によって取り扱いが違う理由としては、中央政府が統一的に地方政府と対応できていないことによると思います。つまり地方独自の事情をどうしても酌量せざるを得ず、また地方自身も必ずしも中央のことを全て聞いているわけではないという理由によると思います。中国は日本のように単一民族国家で一つのまとまった国ではなく、むしろヨーロッパの連合体に近いと考えた方がいいかも知れません。もう一つの理由として、中国で本格的な税制がスタートしたのは94年ですから、まだ10年くらいしか時間が経っていない。従い税務局員の訓練、育成、納税者の納税意識がまだまだ不十分であることがあげられます。中国では20年前には納税することは考えられなかった。この問題はなかなか一朝一夕にはいかないと思います。
 会計制度について、減損会計など日本で採用していない制度を中国は既に採用しているが、それが実務レベルまで浸透しているかは、会計士のレベルによるところが大きいと思います。しかし中国で公認会計士の制度が出来てまだ10数年であるため、その底上げにはまだまだ時間がかかります。制度は近代化されたが、実務レベルのスキルアップ、意識改革がそれについていけず、その解決のためには今後実務の積み重ねによるところが大きく、それなりの時間が必要になると思います。しかし中国の会計事務所のトップは留学帰りで皆若い年代層です。こういう人は欧米流の教育を受けており、知識面、モラル面で非常に高いものをもっています。こういう人々がトップに立つ会計事務所などは今後急速に底上げできることも期待できます。

(以下は「投資機構ニュースNo.100」に掲載)