製造業の日中間分業の現状とキーワード

はじめに
 先般当機構ニュースNO.81号で、中国の統計を使って、中国内での外資の活動を紹介しつつ、中国が部品・材料を海外に求め、完成品を海外市場に販売している実態をお示ししました。今回は、日本と中国に的を絞り、日系製造現法のパフォーマンスと加速する変化の状況と、そのバックグランドを考えてみました。

Q1
 日系製造現法は90年の中端より急激に進出しているが、部品材料の調達状況や製品の販売状況はどうなっているのでしょうか?

A
(1)中国に進出している日系現法の活動を示す正確な統計は日本側には残念ながらありません。アンケート(第30回我が国企業の海外事業活動)による実態調査から推しはかるよりありません。経済産業省による調査を紹介しながら考えてみることとします。(中国でのアンケート集計数:製造業1429社)
(2)同省のアンケート結果は第1表に示した通りです。すなわち、原材調達の面では、比率を減らしながらも、なお依然として、日系現法は、65%程度を輸入原材料に頼っています。また、販売面では60%以上を輸出に依存しております。

第1表 日系製造業の売上及び調達構成                 (単位:兆円、%)
   

 
調   達
売   上
合計 内輸入 (同左比率) 合計 内輸入 (同左比率)
95年 0.43 0.31 (72) 0.73 0.47 (64)
99年 2.2 1.4 (64) 4.1 2.6 (63)

(出所:我が国企業の海外事業活動)

(3) また、通商白書(平成13年版)は、完成品の貿易よりも、部品及び素材等の中間財の貿易額が増加していることに注目しております。第2表は、日中間の中間財の流れを機械類の中で分類して推移をみたものです。上記(2)で示した日系現法の動きは、こうした中間財を中心とする分業体制の高度化も大きな要因といえましょう。

第2表 日本と中国の中間財貿易の動き(単位:億ドル)

 
機械全体
内一般電気
内電気機器
内輸送用機器
内精密機器
90年 日本→中国
10
4
5
0.6
0.4
中国→日本
4
0.6
2
0.1
0.2
14
4.6
7
0.7
0.6
98年 日本→中国
68
24
35
3
4
中国→日本
40
7
21
1
3
108
31
56
4
7

(出所:通商白書13年版)

ただし、第2表を見て気がつくことは、単に機械部品といっても、産業別にばらつきがあり、電機は輸送用機器に比べて、より分業化しやすい要素があるように思われます。こうした点を次に考えてみたいと思います。


Q2
 確かに日中間での中間材貿易は大変な勢いで増加していることは分かりましたが、日中間での分業体制がこのように急速に進んだのは何故でしょうか?

A
(1)生産拠点の移転や国際間の分業を考える前に、従来の日本の製造業の特徴である、同一グループや同一地域内で展開された、「垂直統合モデル」を考えてみましょう。
 日本の製造業の特徴は、製造メーカー(特に最終消費財メーカー)は、従来、品質の安定性に不安がある「外部との取引コスト」の極力減らす観点と、新製品を部品メーカーと一緒に開発することによる「開発コスト(含む期間)」のミニマム化等を考慮して、自社グループ内で内製化して製造することに意を注いできたといわれています。「ケイレツ」といわれたのがその代表例です。
(2)しかしながら、製造業の国際化の進展とともに、[イ]製造コストの削減や原材料確保を狙いとしたサプライ・サイドの事情と、[ロ]現地市場の確保を狙いとした動きと、[ハ]貿易摩擦を回避の為の進出という3つの要因により、生産拠点の海外化が始まりました。
(3) こうした生産拠点の現地化を推進させるものとして、[イ]物流等のインフラ面での整備と[ロ]現地地場企業の技術レベルのアップによる産業集積効果の2つが従来あげられています。中国沿岸部における経済発展は、この両者を実現し、開発や製造工程における「外部との取引コスト」を減少させたといえましょう。(学術的な言葉では「マーシャルの外部効果」が実現したと言います。)
この2つの要因に加えて、近時における情報技術の進歩は、新たに製造方式の変化を促し、更に分業体制が高度化したといえます。この製造方式を「オープン・モジュラー型生産方式」と呼びます。


Q3
 「オープン・モジュラー型生産方式」とは何でしょうか?また「垂直統合モデル」と何が違うのでしょうか?

A
(1)「興銀調査308(2002、NO.3)」に掲載された小論文を引用しながら考えてみたいと思います。
(2) モジュラー化とは、本来複雑な機能を持つ製品を、独立性の高い単位(=モジュール)に分解し、これを組み合わせていく加工方式です。いわば「寄せ集め型」の組立加工方式(=玩具のレゴのようなもの)により、材料・部品の共通化が可能となり、安価な調達が実現できるようになるところが特色です。
(3) モジュラー化を進展させた背景をもう少し詳しくみていきます。第一には、技術的な面から考えると、製品の「デジタル化」があるといえます。その最たるものがエレクトロニクス商品です。又、第二に企業戦略面から考えてみますと、消費者における自分の所有する製品の仕様が他人のものと同じであることにより、他人とネットワークを形成することが可能となり、このことによって、より多くの便益を得ることが出来るという、「ネットワークの外部性」の高い製品に対するニーズの高まりです。その代表は、携帯電話やパソコンによるメールの交換です。つまり、特注部品のみで構成された独自の新商品であっても、他社の製品との互換性がない場合には売れないということです。そこで、市場で大きく流布している「事実上の標準」(デファクト・スタンダード)で使っている材料・部品を使って(自社グループに拘泥せず)組立・加工するという、「オープン・モジュラー型生産方式」になっていきます。
(4) 「垂直統合モデル」と「オープン・モジュラー型モデル」のそれぞれをイメージしたものが第1図のとおりです。オープン型では、安易な「ケイレツ」がなくなり、レゴの組立のように、モジュールの集合体として、組立・加工が実行されていきます。

第1図 生産方式のイメージ比較 

  ○統合され一貫したサプライチェーン



○限定的なメンバー(クローズド型)


○全体最適



○長期安定的関係性


○高度なコミュニケーション
 

○モジュール全体の集合体としてのサプライチェーン



○オープンなメンバー(安易なケイレツなし)


○各生産プロセスでの特化・フォーカス


○(相対的)短期的関係

○ITを活用した電子的コミュニケーション

材料 材料
   
部品 部品
   
組立 組立
   
販売 販売

(出所:興銀調査同上)

 


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