投資機構会員ネット・法律税務相談室より(第38回)

 会員ネット内の法律・税務相談室より、皆様のお役にたつと思われる事項を抜粋して紹介させて頂きます。
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質問1.ソフトウェアと技術輸出入管理条例について
 当社は日本法人で中国に現地法人を保有しております。当社で用いている業務用ソフトウェアと同じソフトウェアを中国法人で使用させ、情報共有を図りたいと考えていますが、この業務用ソフトウェアは、中国では販売されておりません。そこで、日本法人である弊社が日本国内で購入して、中国法人に売渡す方法、ないしは有償貸与するか、現地法人が日本のソフトウェアメーカーから直接購入するか、のいずれかの方法を考えております。
 このそれぞれのケースにおいて、中国現地法人は、「技術輸出入管理条例」にもとづく申請手続きをしなければならないのでしょうか。

回答1.
 お問合わせの件ですが、ソフトウェアを有形資産(製品)と見るか、無形資産(技術)と見るかで手続き方法が変わるものと考えます。
 前者の場合、一般貿易と同様に輸入通関手続きを行い関税を納付しなければなりません。当然ソフトウェアの売買に際し、増値税も発生します。一方後者の場合、ソフトウェアを無形資産(技術)として輸入しますので、税関での通関手続は発生しません。その代わりソフトウェアの譲渡(または使用許諾)契約を『技術輸出入管理条例』に基づき登記申請を行う必要があります。通常このようなソフトウェアの譲渡(または使用許諾)に対しては営業税が発生します。
 両者の区別を一概に判断することはできませんが、例えば単純に市販されているパッケージソフトの売買であれば有形資産として取扱われるでしょうし、個別に開発したソフトウェアを現地法人の生産技術の一環として導入するのであれば、無形資産の導入として取り扱われると考えます。


質問2傘型会社の支店・事務所について
 傘型会社設立を機に、現在の駐在事務所を転換、また新規拠点を設立しようと検討しております。その際、支店を設けると地域によっては企業所得税が発生し、上海の傘型会社と二重課税される恐れがあると聞いております。そうであれば、契約も増値税伝票も発行できなくても、支店ではなく事務所にした方が良いのではと考えております。
 支店の税務について実態を教えていただけないでしょうか。また本当に二重課税のリスクというのはあるのでしょうか。

回答2.
 傘型企業における税務に関しましては、『外商投資企業が投資業務に従事する場合のいくつかの税務問題に関する通知』〔1995年1月13日 (94)財税字第083号〕(以下「通知」という)があり、この「通知」によれば、傘型企業の税務は『中華人民共和国外国投資企業および外国企業所得税法』〔1991年4月9日 中華人民共和国主席令第45号発表〕(以下「税法」という)の規定により計算・納税されるものとなっています(配当に関しては税法の実施細則第18条に更なる規定あり)。
 従いまして、本機構・分支機構の税務に関しては、その大本は税法の実施細則第5条2項により、「外国投資企業の中国国内または国外の分支機構(支店等)による生産・経営所得およびその他の所得は、当該総機構(本店)がこれを集計して企業所得税を納付するものとする。」と規定されています。合算申告納税に関しては、同じく税法の実施細則第91〜93, 96条により規定されており、この内容に基づく限りでは、『所得税の二重課税』の心配はないかと思われます。
 ただし、傘型本社所在地の企業所得税の税率と分支機構所在地の税率を確認する必要があります。税率が異なる地域に分支機構が設立された場合には、分支機構の課税所得を算出する必要があります。
 また現地の税務署が、自らの管轄区で税収を上げるという事情で、分支機構に所得税の納税要請を出されているということも、可能性としては有り得るかもしれません。
 いずれにせよ、現地の税務署がどういう背景・事情で分支機構に所得税の納税要求をしているのか、ということが重要で、具体的な現地の状況が分からなければ、誤解が誤解を生むようなことになりかねませんので、そこをきちんと整理した上で、一度会計士の先生に相談することをお勧めします。


質問3土地使用権料について
 土地使用権を取得した場合、土地使用権料以外に固定資産税や使用税等の費用もかかるのでしょうか。

回答3.

 土地使用権を保有し、建物を保有する外商投資企業に適用される税金、およびそれに類するものとして以下のものが挙げられます。
(1) 都市不動産(土地建物)税。主な根拠規定は『都市不動産税』(1951年8月8日)。外商投資企業、外国企業および外国人の場合、所有する建物のみに課税。課税標準は建物の原始取得価額から10〜30%の控除率(控除率は各地方で決定)し、1.2%の税率で課税。
 (2) 土地使用費(外商投資企業および外国企業のみ。内資企業は土地使用税の納付義務あり)。根拠規定は、『城鎮都市使用税暫行条例』(1988年9月27日発布、以下「暫行条例」)および『外国投資企業及び外国企業の在中機構の用地に対し土地増値税を非課税とすることに関する通達』(1988年11月2日、以下「通知」)。土地使用費の額は各地方政府で決定。


質問4中国(上海)での小売、卸売企業設立について
 一般的に(投資額など別にして)、保税区で貿易会社を設立したほうがよいのか、商業企業として設立したほうがよいのか、それぞれメリットになる点、デメリットになる点について教えてください。

回答4.

 中国(上海)で卸売、小売企業を設立するにあたり、上海外高橋保税区に貿易企業(以下、貿易企業)を設立するケースと商業企業(以下、商業企業)を設立するケースとで比較させて頂きます。
1.登録資本金
(1)貿易企業:50万人民元(上海外高橋保税区)
(2)商業企業:小売業30万人民元、卸売業50万人民元
2.経営範囲
(1)貿易企業:国際貿易、代理貿易、貿易コンサル等
  ・自社製品以外(親会社、関連会社製品等)の仕入販売が可能。
   保税加工貿易。
  ・取扱製品を明確化する必要なし(F/Sの提出不要)。
(2)商業企業:卸売業、小売業、手数料代理、フランチャイズ経営
  ・自社製品以外(親会社、関連会社製品等)の仕入販売が可能。
  ・取扱製品を明確化する必要があり(F/Sに取扱品目、販売計画について詳細に記載が必要)。現状総合商社的な経営範囲は認められていない。
3.企業所得税
(1)貿易企業:15%(上海外高橋保税区。他の保税区では優遇税率の適用のないところもあり)
(2)商業企業:33%
4.関税・増値税
(1)貿易企業:自ら増値税インボイスを発行することはできない。
        交易市場を通じて区外の企業と人民元取引をすることは可能。
(2)商業企業:一般納税人であれば増値税インボイスの発行は可能。
5.外貨管理
(1)貿易企業:
  @対外決済、保税区外との保税貨物の決済→外貨による決済
  A保税区内の決済、非保税貨物の決済→外貨または人民元による決済
  Bサービス等の貿易外取引の決済→人民元による決済
(2)商業企業:
  @対外決済→外貨による決済
  A中国国内取引→人民元による決済
6.分公司設立
(1)貿易企業:分公司の設立は不可能。区外事務所の設立は可能(但し、その場合でも
   営業行為は不可)。
(2)商業企業:分公司の設立は可能。
7.メリット
(1)貿易企業
  ・設立の認可申請が比較的早い。
  ・保税区貨物の取引等の本来的機能を享受できる。
(2)商業企業:
  ・中国での仕入販売が合法的に可能(保税貨物の取扱は不可)。
  ・小売業ができる。
8.デメリット
(1)貿易企業:
  ・人民元取引については根拠規定がない。
  ・保税区の商業企業化は現状認められていない。
  ・小売業ができない。
  ・保税区から輸出する場合輸出増値税の還付が難しい。
(2)商業企業:
  ・設立にあたり商務部の批准が必要。
  ・取扱品目に限定あり(現状では政府担当者の口頭指導のみの模様)。


質問5兼務者の給与処理について
 日本人出向者が中国において複数の会社の職務を兼任する場合、その出向者の給与負担は職務の比率に応じて厳密に分散させなければならないのでしょうか。
 本ケースとしては、@兼務する複数会社の中で最も労働時間の比率の高い会社に給与負担を行う。Aその他の会社は給与を支給しない。B兼務の比率は固定化しておらず常に変動する。C兼務する会社の中には「常駐代表機構」の代表は含まれていない。という状況を想定しています。
 個人所得税の納税上は所得が集中する会社で行えば問題ないかと存じますが、企業所得税上は合理的に人件費を分配することが求められるのではないかと心配しております。現実には多くの企業で、兼務の実態があると思いますが、税務を強く意識し過ぎると硬直的な組織運営になってしまうことも心配しております。

回答5.

ご質問の件ですが、結論から申し上げますと、兼務の勤務実態に応じて、それぞれ人件費を負担する方式が望ましいと考えます。
理由としては、企業所得税の観点から、一方の会社で過大な給与負担を行った場合、後日税務調査を受けた際に、その損金算入部分について否認される畏れがある為です。
 しかしながら、おっしゃる通りあまりにも税務を意識しすぎると、実務的に不便が生じるかと思います。給与負担については、基本的には当事者間の決め事ですので、給与負担割合をどうするかをぞれぞれの企業の董事会で明確に決議し、議事録に残しておけば足ります(実際そのように行われているようです)。一方で、税務上の問題を回避する為に、管轄するそれぞれの税務局に給与負担部分について事前に相談の上、了解を得ることをお勧めいたします。
 個人所得税の点では、中国国内で二箇所以上から所得がある場合、一箇所の地域を選択し、申告納税する必要があります『個人所得税法実施条例(1994年1月28日・国務院令142号)第35条』。
 その後、支払を行った会社に対して、給与負担分を別の会社が支払い調整しますが、管轄する税務署を跨る場合は、企業所得税と同様に事前にそれぞれの税務局で相談されることをお勧め致します。


質問6外資独資会社の分工場設立
 外資独資の会社で省または市を跨って分工場を作る事は可能でしょうか?

回答6.

外資独資企業による分支機構の設立については以下の規定が関わってきます:
『企業法人登記管理条例施行細則』
(2000年12月1日国家工商行政管理局令96号により改正)
『中華人民共和国会社登記管理条例』
(1994年6月24日国務院令第156号公布、7月1日施行)
これらの細則・条例では、その登記した地域以外にて分支機構を設立することを禁止した規定はなく、規定上は制限はないと考えても宜しいかと考えます。
 しかしながら、分支機構の特徴として、分支機構機構は独立の法人格を有していないので非独立採算を実行しなければならず、分支機構の企業所得についてその本店が所得税を原則集計納税することになります。従って、分支機構機構が本店登記地以外に設立されてもその地域の税収増にはつながらないため、独立法人の設立を要求されることがあると聞いています。

以上