投資機構会員ネット・法律税務相談室より(第23回)

 会員ネット内の法律・税務相談室より、皆様のお役にたつと思われる事項を抜粋して紹介させて頂きます。
 なお、当機構会員の方でまだ会員ネットにご登録されていないかたがいらっしゃいましたら(ご登録は無料です)、ぜひともご登録いただき、どんどんご質問をお寄せ下さいますようお願い致します。
トップページからユーザー登録を行った上でログインしてください。
※通知した企業別ID、パスワードではログインできません。

質問1.「 計画生育とは?」
貴会が公表されている就業規則ひな形の中に、女子社員に関する計画生育という言葉が出てくるのですが、具体的にどのようなもので、その法的根拠は何なのでしょうか? また、計画生育に関する証明書類があるそうですが、どのような機関が発行する文書なのでしょうか?
計画出産と単純に訳した場合、それを証明する文書とは、例えば避妊手術を受けた医師の証明等を指すのでしょうか? いずれにしても、就業規則でこのような項目を採用時の提出書類として義務づける意図はどこにあるのか? また、このような極めてプライベートな問題に立ち入って採用の条件とすることに問題はないのか? 晩婚奨励との関係についても知りたいのですが。

回答1.
当機構のデータライブラリーにて公開している就業規則のひな形の第13条第1項第(3)号においてご指摘の通り「計画出産を実行している」との表記があります。
さて、「計画出産」に関する法律として、「人口及び計画出産法」(第9期全国人民代表大会常務委員会第25回会議採択 国家主席令第63号2001年12月29日公布 2002年9月1日施行)があります。また北京や上海といった市のレベルでも計画出産に関する条例があります。
「人口及び計画出産法」においては、「公民は出産する権利を有し、法により計画出産を実行する義務を負う」旨定め(第17条)、「少数民族も、計画出産を実行しなければならない」(第18条第2項)と計画出産を義務付けています。その一方で、「国は、計画出産を実行する夫婦に対して規定に従い報酬を与える」と定めており(第23条、この場ではこの具体的な報酬の内容については割愛します)、自由意志により終身にわたり1名の子のみを出産する夫婦については、国は『一人っ子父母光栄証』を発給」し、「『一人っ子父母光栄証』を取得した夫婦は、国及び省、自治区または直轄氏の関係規定に従い一人っ子報奨を享受する」(第27条第1項及び第2項)と定めています。
言及された「計画出産に関する証明書」とは、この『一人っ子父母光栄証』に相当するのではないかと推察します。小生は『一人っ子父母光栄証』を見たことがないので、具体的に何が記載されているかは不知です。
ところで、ご質問の趣旨から外れるかと考えますが、当機構のデータライブラリーにて公開している就業規則のひな形に、「計画出産」が言及されていることについて、説明致します。
その「計画出産」が言及されている箇所は、労働契約の解除が認められない事由を列挙した所で、そこでは「計画出産を実行している女子従業員が妊娠、出産、ほ乳期間にあるとき」は労働契約を解除しない旨定めています。
これは、裏を返せば計画出産を実行しない女子従業員については、就業規則に従い労働契約を解除できるような余地を持たせるためだと考えます。


質問2「合弁企業の経営範囲と客先限定」
 当社は部品メーカーで、ある特定のメーカー(A社)に部品を納入する合弁企業を設立すべく、中方パートナーと交渉を重ねています。当社は中国内に他にも多数の合弁企業/独資企業を有しており、それらとの住み分けを明確にする必要があります。(既存合弁企業にも中方パートナーがおり、彼らの利害を考える必要があるためです)
そこで、合弁企業の経営範囲を「A社向け部品の開発、製造、販売およびその付帯サービス」と中方に提案しました。
すると中方は「中国工商管理部門が明確な制限性規定を設けている。合弁会社の経営範囲に、『A会社向け部品』と書くことはできない」と主張してきました。
中方に「その規定を見せて欲しい」と要求するつもりです。しかし併せて、そもそもこの中方の主張は真実なのか、裏を取っておきたく思います。もし有益な情報/アドバイス等ございましたら頂きたく、宜しくお願いします。
なお、この点について中方と本当か嘘かの議論をすると交渉が長期化しかねませんので、「合弁会社がA社以外に部品を納入すること」を董事会の全会一致事項としたいと、交渉するつもりでおります。

回答2.
 ご質問を受けて、合弁契約の当事者である中方から「合弁会社の経営範囲に販売先を具体的に制限することは工商局の指導により不可能」との主張を裏付ける規定を捜してみました。
おそらく該当するのは「国家工商行局関于核定企業経営範囲有関問題的通知」(1989年7月14日発効 工商企字(1989)第142号)ではなかろうかと考えます(御社で弁護士を起用されているなら、念のため弁護士にご確認下さい)。
 その第4条に、企業の経営範囲を策定するにあたり、生産型、科学技術型企業について経営範囲を広くすることが可能である旨定めてありますが、経営範囲を広く取ることは可能であって義務ではないようです。つまり、中方の主張はある程度、的を得ているといえるのではないでしょうか。
 ところで、御社の中国事業の具体的背景を承知していない前提でコメントいたしますが、合弁契約(=定款)の経営範囲において、合弁会社製品の販売先を明記して限定することは、あまり得策ではないと考えます。
すなわち、中国の急速な経済発展に伴い合弁会社の製品の販売先が、A社以外にも増えることは十分に予想されます。A社以外に販売する場合、合弁契約の修正が必要になり、そのための政府当局への申請が必要になり、手続き上非常に面倒です。合弁企業の柔軟な活動を確保するために経営範囲は広めに定めておいたほうが良いかもしれません。
 では、実務として当面販売先をA社に限定するためには、以下の対応があるかと考えます。
A社との取引に関連して、売買基本契約を締結する必要がありますが、その契約において、「合弁会社は合弁会社の製品をA社にだけ販売し、第三者に一切販売しない」旨明記し、一方A社にも「合弁会社の製品はA社内での製品製造の目的だけに使用し、第三者への転売、譲渡、貸与および担保設定に用いない」旨の義務を負わせておく。
上記のような内容を盛り込んだ売買基本契約締結の承認を、合弁会社設立後の第1回の董事会の決議事項として、盛り込んでおくことにより、御社の意向を反映することは可能ではないかと考えます。


質問3「輸出に伴う増値税還付の条件(輸出割合の制限)」
 1997年財政部・国家税務総局50号の「輸出入経営権を持つ生産企業の自営(委託)の輸出貨物に対する税収の免除、控除、還付管理方法に関する通知」で、輸出割合が50%に満たない企業に対しては、増値税の還付は行わず、未還付分を次期に繰越すというというように規定しているように読めるのですが、このような理解で正しいでしょうか?
その理解で正しいとした場合、輸出の割合や付加価値の割合にもよりますが、実質的に繰越される未還付増値税が積みあがっていくということも有り得るということでしょうか?

回答3.
 ご質問の『輸出入経営権を有する生産企業が自社(委託)での輸出する物品に対する税額の免除・控除・還付税収管理弁法の通達』(財政部、国家税務総局[1997]50号1997年5月21日公布、1997年1月1日施行、以下「通達」)は、その後に公布、施行された『輸出物品に対する税額の免税・控除・還付方法の更なる推進に関する通達』財政部 国家税務総局 2002年1月23日[2002]7号、『輸出物品に対する税額の免税・控除・還付管理取扱い規定』(試行)国家税務総局 2002年2月6日[2002]11号にて改正されており、「通達」において増値税の還付条件となっていた「輸出割合50%以上」は撤廃されているものと判断します。
したがって、総売上高に占める輸出割合が50%以内であった場合においても、国内調達や付加価値の割合により、増値税還付の計算式による「当期納税額」がマイナスとなれば、還付申請ができることになります。しかし、「還付申請するか」、「翌期繰越し控除するか」については任意とされているようです。
会計士によると、当期納税額の計算により還付申請が可能となった場合においても、国内販売を行なう企業は翌月に再度売上増値税が発生するため、還付申請せずに還付可能な額をそのまま繰越しし、翌月の納税額計算時に控除しているようです。逆に、全量輸出の場合には、控除する国内売上増値税がありませんので、毎月還付申請を行なうことになるかと思われます。
このことから、中国国内売上があり、経常的に売上増値税の支払が発生するケースであれば、遅延するであろう還付申請を選択するよりは、経過中の資金負担等を考えれば、翌月に繰越し、支払うべき売上増値税から控除する方が効率的であろうと考えます。


質問4「来料加工時の原産地」
 1.香港法人から中国の加工業者へ材料を無償出荷(来料加工)し、組立完成後、全量香港の法人で引き取る場合、原産地はどこになりますか? 中国側での付加価値は組立工数が殆んどで極めて少なく、価格に占める材料のウエートが大きい。しかしながら香港製の材料もまた少なく、他国からの輸入が大半を占める。この場合の原産地は中国か、香港か、宜しくご教示下さい。
2.委託加工でも中国製との認定であれば香港経由で中国へ輸出される場合、この商品(半完成品)の中国側での輸入税はかからないと思われます。この理解は如何でしょうか?

回答4.
 1.原産地規則の定義について説明します。原産地規則は、国際的に取引される製品の国籍を判定する為に用いられるものです。大別して特恵分野(NAFTA、EU等の地域貿易協定に係る地域間、先進諸国と開発途上国間)とそれ以外の非特恵分野に分かれます。
 特恵分野では、当該地域で製造された製品に特恵待遇を与える為に個別に原産地規則を定めております。それ以外の非特恵分野では、@アンチダンピング税が課せられる製品の場合においての、課税対象国原産の製品か否かの判断基準、A貿易統計の作成、等といった意義で原産地表示が必要になりますが、国際的に統一された規則はなく、WTOルールに基づき、原産地規則の国際的な調和作業が行われているものの、現状としては各国が独自に定めています。
 現在、中国・香港間においてもCEPAという地域貿易協定が結ばれておりますが、CEPAでは香港から中国へゼロ関税対象製品を輸出する場合の香港の原産地表示について規定しているだけですので、中国における原産地表示の規則については、中国国内の既存法を適用すると考えます。 
中国からの輸出貨物の原産地業務の管理については、『輸出入貨物原産地規則』(1992年3月8日公布、5月1日施行)で規定されております。この中で、委託加工に従事する企業についても、同規則に基づいて原産地証を取得することができると規定しております。(第5条)また、「輸入した原料・部品の一部、または全部を使用し、中華人民共和国の国内で主要な、及び最終の製造・加工工程を行い、その外形、性質、形態または用途に実質的な変化を生じさせた製品」については、その輸出貨物の原産地を中国とすると規定しております。(第6条[2])
 この「実質的な変化」については具体的な基準は無く、最終的には当局の判断によると思われますが、一般的には
 ・加工後、HSコードが変更されるような加工工程
 ・その製品が完成品となる最終的な加工工程
が一般的な判断基準になると考えます。
 現状として、中国での加工工程は簡単な組立のみで、付加価値が少ないとのことですが、上述の加工行程が中国で行われて、完成品として輸出される(香港輸出後にさらに製品の外形・性質・形態を変化せしめるような加工を行わない)のであれば、中国が原産地になると考えます。
2.来料加工した商品(半完成品)を香港で加工を行わず(原産地が中国の状態で)、中国へ再輸出した場合の中国側の輸入税(関税)賦課の有無と解釈して回答します。
 結論からいいますと、例え原産国が「中国」と認定されていても、当該貨物が、中国境界を通過する場合は、一部の免税規定等特別な場合を除き関税が賦課されます。
 まず関税の定義について説明しますと、関税は「貨物が国境を通過する際に課せられる税」と解釈するのが一般的です。つまり、CEPA等の個別に定められた免税規定を除き、国境を越えて来る貨物は、その貨物の原産地に拘わらず全て関税の対象となるといえます。また、中国の『輸出入関税条例』(国務院1992年2月28日第二次改正)第2条1項においても、「輸出入を許可する貨物は、国の別な定めがあるときを除いて、税関が税関輸出入税則(関税率表)により、輸入、輸出税を徴収する」と規定しています。
 次に、中国が原産地の貨物を中国に輸入する際の、免税規定の有無についてですが、同条例第2条2項において、「海外で購入し輸入する原産地を中国とする貨物は、税関輸出入税則(関税率表)により輸入関税を徴収する」と明確に規定しています。
 香港は、中華人民共和国の一つの行政単位に過ぎないので、国際法上は、中国の一部と見なされていますが、輸出入制度を含む諸制度は、中国大陸側とは異なっています。(「一国二制度」)従って、境界の概念は他国の国境と同様であり、例え自国原産地の輸入貨物であっても、中国再輸入時には関税が賦課されると考えます。


質問5「現物出資のデメリット」
 1.よく現物出資は何かとトラブルが多いので避けたほうがいいと聞きます。具体的にどのようなトラブルが発生しやすいのでしょうか? 手順さえしっかり行えば防げるというものでもないのでしょうか?
2.土地使用権の評価を中国の鑑定機関で一旦出された場合、それに対して異議を唱えることはほぼ不可能と考えていいのでしょうか? また、独資企業設立の場合は土地使用権以外のものによる現物出資が考えられますが、この場合は異議を唱える相手方がいないという点から特段の困難はないものと考えてもいいのでしょうか?
3.日本海事検定協会の評価は合弁企業、独資企業各々の場合、どれほどの有効性を持つのでしょうか?

回答5.
 1.合弁会社設立における現物出資の件ですが、中方、日方それぞれの現物出資に関わるトラブルと予防策とに分けて説明いたします。
≪中方による出資の場合≫
土地使用権の現物出資について
・中国における土地使用権は、大きく「払下土地使用権」と「無償割当土地使用権」があります。後者を現物出資の対象とする場合、本来であれば政府の特別の認可が必要ではあるのですが、こうした手続きを行わず、「無償割当土地使用権」による現物出資を認めてしまっているケースがあります。
・現物出資する土地が、いわゆる「集団所有土地」の場合もトラブルになりやすいといえます。土地の国有化を経て、払下げ手続きを行ったうえで、初めて合弁会社に現物出資が可能になります。
・土地使用権の評価は、原則として中国の評価機関より評価を受ける必要がある(特に当該土地が国有資産である場合)が、この評価額が外国企業からみて必ずしも適正でないこともあります。
<予防策>
・土地使用権には、必ず「土地使用権証書」が発行されております。この使用権証書のコピーを入手のうえ、現物出資される土地使用権が「払下土地使用権」であることを確認する必要があります。また、管理当局との間で締結された払下げに関わる契約も入手のうえ、確認する必要があります。
≪日方による出資の場合≫
@設備、機械の現物出資について
 現物出資する設備、機械の価額についても、中方から不当に高いのではないか、不要な中古の設備を合弁会社に高く現物出資したのではないかという疑いをもたれる可能性があり、交渉では、モメるネタになります。
<予防策>
・合弁会社の外国当事者企業が機械設備を現物出資する場合、価額について商品検験局が「外商投資財産鑑定管理規則」、「当面の外商投資財産の価値鑑定工作に関する通知」により、その評価額を検討しておりますが、実際の価額認定は、基本的に外資系企業の揃えたエビデンスによって価額評価がなされるようです。トラブル回避のためにも、新品、中古とも設備、機械の取得価格、実際の状況、性能レベル、市場価格など評価価額の裏付けとなる資料の準備が必要です。
Aノウハウの現物出資について
 外国企業がノウハウを現物出資する場合、ノウハウの評価価額について、中方から日本では誰でも知っているようなノウハウを高く評価し、現物出資しているのではないかという疑いをもたれる可能性があり、これも交渉の際にモメます。
<予防策>
・「中外合弁経営企業法実施条例」第22条により、ノウハウの評価価額は、当事者による合意で決定することも可能であり、当事者が同意した第三者に評価を依頼することもできます。審査認可を求める場合には、必ず関係資料の添付が必要となりますので、技術の特徴、ノウハウの特徴、実用的な価値、評価価額の裏付けとなる資料の準備が必要です。
2.中国の鑑定機関の評価結果に対する異議について、土地使用権の価額は、原則として中国の評価機関により評価を受ける必要があります(国有資産評価管理規則)が(特に、当該土地が国有資産の場合)、この評価額が適正でないと判断する場合には、外国企業側による対応策として、別の資産評価機関に依頼し2つの評価額を検討し、その評価額に大きな差があれば、中国側と交渉するなどの方法が一般的に考えられます。
 外国企業による現物出資の評価額についてですが、合弁独資企業の設立の場合、いずれも当然のことながら中国公認会計士事務所により出資検証を受ける必要があります。
 独資の場合、機械設備を輸入して現物出資する場合が考えられますが、外商投資企業設立において、海外投資者の投資した財産の鑑定については、「外商投資企業の財産鑑定管理規則」(1994年3月18日公布、1994年5月1日施行:以下規則)に規定されています。
 この規定では、商検局(現:中国質量監督検験検疫局)が、それぞれの担当する外国企業投資財産鑑定の管理に責任を負い、指定された鑑定機構が鑑定業務を行うことになっています(規則第3条)。各地の商検局と指定の鑑定機構は、鑑定業務を行い「価値鑑定証明書」を発行し、この証明書は、現物出資をした財産の価値を証明する有効な根拠と定められています(規則第7条)。また、「輸出入商品検査法実施条例」(1992年10月23日交付、同日施行)第32、33条においても、商検機構及び国家商検局、商検機構が指定する検査機構及び国家商検局の認可を受けた検査機構は、外国企業の投資財産の価額等の鑑定業務を取扱い「価値鑑定証明書」の公布ができることとしております。
 一般市場で購入した新製品の機械設備を現物出資する場合には、適正価額の判定は、その取得価格を参考にするなど容易ですが、自己製造した機械設備、中古機械設備、無形固定資産等の価額は一般に、認可機関、税関、科学技術委員会、中国公認会計士、税務局検験局等から、それぞれの立場でその価額と実在性について評価、審査されることが考えられますので、必ずしも購入価格とならないことに留意が必要です。
 また、申請人は鑑定された評価額に異議がある場合、評価額を出した商検局に再評価を申請することができることとしております(外商投資財産鑑定管理規則第19条)。
 なお、現物出資を行う場合、無形資産のうち工業用所有権、特許権、非特許技術使用は、その最終的な出資金額が登録資本の20%以内とする必要があるため留意が必要です。
3.2でご説明させていただいた通り、合弁、独資企業の機械設備等の現物出資における財産の鑑定については「外商投資企業の財産鑑定管理規則」に定めてあります。社団法人日本海事検定協会は、同規定第3条に基づき、国家質量監督検験検疫総局により指定された価額鑑定認可機関でありますので、有効性は認められると考えられます。

(「投資機構ニュースNo.102」に掲載)