投資機構会員ネット・法律税務相談室より(第22回)

 会員ネット内の法律・税務相談室より、皆様のお役にたつと思われる事項を抜粋して紹介させて頂きます。
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質問1.「商標権の使用料について」
商標使用許諾契約に「使用料」を規定したいと考えています。 この場合、「使用料」について教えて下さい。
(1) 国の関連規定の中でなにか制限があるのでしょうか?
(2) 制限が無い場合、一般的(一番多く)にどのような基準(方法)で「使用料」を決定しているのでしょうか?
(3) 対象期間はどのような設定が多いのでしょうか(期限付きか契約有効期間)?
(4) 送金に際して、中国のどのような規定により課税(源泉徴収)されるのでしょうか?また、その場合の料率はどうなるのでしょうか? そしてその税金は日本で還元されるのでしょうか?

回答1.
(1)商標使用料に関しては、それ自体を制限する規定のようなものはありません。商標使用許諾契約に関しては、「商標法」の第40条に「商標登録者は、商標使用許諾契約の締結によって、他人が当該登録商標を使用することができる。」と規定されており、使用料に関してもその商標使用許諾契約において、当事者同士が個々の契約の中で取り決めるものと考えます。
(2)使用料の決定方法については、その商標を使用した商品の販売高と連動して使用料を決定する方法が一般的なようです。
(3) 「商標法」の第37条に「登録商標の存続期間は10年とし、登録日から起算する」となっていることから、使用料の対象期間としては、その登録商標の残存期間で設定されるケースもあるようです。但し、これも当事者同士の個々の契約で、取り決められるものと考えます。
(4)課税される税金の種類としては企業所得税と営業税があります。
企業所得税に関しては、基本的には、「外商投資企業及び外国企業所得税法」(1991年7月1日施行)の第19条にて、「外国企業が中国国内に機構、住所を設立していないが、中国国内に源泉を有する利益、利子、賃貸料、特許権使用料及びその他の所得を取得した場合、又は機構、住所を設立しているが当該所得と当該機構、住所との間に実際の関連が無い場合、いずれも20%の所得税を納付しなければならない。」と規定されています。但し、その後の「外国企業の我が国国内を源泉とする利息等の所得につき所得税を軽減する問題に関する国務院の通知」(2000年11月18日 国発37号)にて、「2000年1月1日から、我が国国内において機構もしくは場所を設立していない外国企業が我が国から取得する利息、賃料、ライセンスされた権利の使用料その他の所得については、又は機構もしくは場所を設立しているけれども上記各所得とその機構もしくは場所と実際的関連が無い場合には、10%に軽減した税率に従い企業所得税を徴収する。」と通知されていますし、加えて「日中租税条約」第12条においても限度  税率10%(みなし税率20%)に定められているため、企業所得税は10%が適用されると考えます。
営業税については、「外国企業及び外国籍個人の技術譲渡収入につき営業税の徴収を免除する範囲を明確にする問題に関する国家税務総局の通知」(2000年10月8日国税発166号)の第2条にて、「技術譲渡契約中の商標使用費又は類似性質の収入は、財税字[1999]273号文書の規定する営業税徴収免除の範囲に属しない。」と規定され、商標使用料については営業税が課税されることが確認されています。加えて、「外国企業及び外国籍個人による無形資産の譲渡に対する営業税に係る若干の問題に関する財政部及び国家税務総局の通知」(2001年3月16日財税[2001]36号)の第1条においても、「技術以外の無形資産の譲渡による収入については、規則どおり営業税を徴収する。」と規定されています。税率については、「営業税暫定条例」(1994年1月1日施行)の添付資料:「営業税税目税率表 税目8.無形資産譲渡」にて、商標権の譲渡については5%と規定されています。納付の方法については、いずれも源泉徴収の方式となります。企業所得税については、上述の「外商投資企業及び外国企業所得税法」の第19条に、営業税については、「外国企業による我国に対する無形資産の譲渡について営業税を徴収する問題に関する国家税務総局の回答」(1998年国税発797号)の第3条にて、源泉徴収される旨、規定されています。
 なお、ご質問の税金の還元について、企業所得税については、「日中租税条約」第23条第2項(a)において、「直接税額控除」が認められていますので、中国での実際納付税額部分10%が日本の法人税額から控除されます。加えて、同第23条第3項(c)において、使用料については20%のみなし税率の適用となりますので、実際課税との差額である10%の「みなし直接外国税額控除(実際納付していないにも係らず納付したものとみなされ税額控除されること)」が認められ、その部分がさらに日本の法人税額から控除されることとなります。
営業税についてですが、日中租税条約の対象となる中国の税金は各種所得税であり、営業税等の流通税は対象になりませんので(同第2条第1項(a)参照)、外国税額控除を受けることはできません。
※以上は一般的な解釈を示したものであり、個別には当局、ならびに専門の弁護士または会計士に相談されることをお勧めします。


質問2「合弁企業の再投資について」
 現在、出資比率が50%(日方)・50%(中方)の合弁企業(A社)がありますが、この企業が再投資にて新たに会社を設立する場合、その新会社の外資の出資比率はどのように見られることになるのでしょうか? 例えばA社が50%・日本本社より50%の出資にて新会社を設立したと仮定した場合、新会社の外資の出資比率は純粋に日本から投資した50%と見られるのか、A社に含まれている外資分を加味して75%と見るのかいずれになるでしょうか? 業種によっては外資の出資比率を制限していますが、ちなみに考えている新会社は75%の制限があります。
既設立の合弁会社の再投資をどのように判断すればよいでしょうか?

回答2.
 外商投資企業の国内再投資については2000年7月公布の「外国投資家投資企業の国内投資に関する暫定施行規定」がその根拠法規になりますが、この中で外商投資企業が国内投資を行った場合、その出資比率をどのようにカウントするかは明確になっていません。
関係者に確認しましたが、運用としては外商投資企業の外資出資分を加えた75%と考えるのが一般的のようです。しかしながら地域によっては外商投資企業の外資出資分を外資比率にカウントしないと解釈しているという話も聞いており、全国統一的に運用されていないのが現状です。外商投資企業の再投資を行うにあたっては設立する地域の当局にその見解を確認する、あるいはどちらに解釈されても問題ない出資比率での設立を検討されることをお勧めします。また同法3条では「外商投資企業の国内投資については『外国投資家投資方向指導暫定規定』及び『外国投資家投資産業指導目録』の規定に照らして執行する」とあり、おっしゃる通り指導目録で外資出資比率制限がある場合はそれに従う必要があります。


質問3「立替金の日本への送金について」
 日本より中国の現地法人に対し、中国側の都合で航空便での製品の発送をした場合、日本側で立替負担した運賃を請求できるでしょうか?

回答3.
 立替金につきましては、対外送金上、非貿易項目での取扱いとなります。非貿易項目の対外送金は、『貿易外支払にかかわる外貨の売渡、対外支払及び国内居住者個人の外貨収支管理取扱い規定(試行)』(2002年5月1日施行)『現行法規では明確に定めていない貿易外取引の外貨購入、対外支払にかかわる問題についての通知』(2003年4月1日施行)といった法規が施行され、それまで具体的な取決めのなかった非貿易項目の対外送金についてかなり明確化されました。中でも後者の法規では、現行の規定上明確な規定がない、非貿易項目の対外送金については5万米ドル以下のものであれば、外貨管理局の審査を経ず銀行審査のみで対外送金できるようになりました。(データライブラリーにございますのでご参照ください。)
しかしながら、中国では外貨が海外に流れる事を厳しく管理しております。また親会社に対しての架空・水増し代金、移転価格等については厳しく取り締まりされています。5万米ドル以内は外貨管理局の審査が無くなり、手続の簡便化が図られたとはいえますが、立替金という名目での送金を銀行が許可する事は現在でも難しいと考えます。本件について、航空運賃の立替を日本側でしなければならなかった事由とその行為の真実性を示す証憑書類を整えた上で、現地法人の取引銀行に確認される事をお勧めします。


質問4「技術移転に関する訴訟について」
 日本の企業は中国へ技術移転する場合、契約履行過程において、中国側と争議などが発生し、法的機関に提訴しなければならない場合、通常、技術移転先の中国法的機関に提訴するのでしょうか? それとも、日本の裁判所に提訴を行うのでしょうか?
また、日本の法的機関に提訴した場合、その裁判結果は中国で認められるのでしょうか?上記質問に関し、法的な根拠があれば、教えて頂けないでしょうか?

回答4.
 まず、日本企業が中国企業へ技術移転を行う場合、「技術輸出入管理条例」にて技術援助契約を日中間で締結して登録する必要があります。また、契約法第12条では、一般的に「紛争解決方法」の条項を盛り込まれるとされています(但し契約成立の必須条件ではありません)。
 契約法でいう紛争解決の方法には、まず和解または調停を通じて紛争解決を図ることができ、それによる解決を望まないまたは不可能な場合に、仲裁への申請または人民法院への提訴が可能と定めてあります(契約法第128条)。
 仲裁による解決を選択した場合、契約において、仲裁地および仲裁を付託する仲裁機関を特定する(=「仲裁合意」)必要があります(仲裁法第4条)(例えば、上海市において中国国際経済貿易仲裁委員会による仲裁など)。この場合、仲裁地や仲裁機関を中国に限定する必要はなく、契約当事者間で合意すれば、日本やシンガポールなど、日本側に有利な地域または仲裁の経験が豊富だと思われる地域を選択することも可能です。
なかには、契約当事者の公平間や、紛争が容易に仲裁申請に持ち込まれないように、日本側が仲裁申請をする場合には、中国の中国国際経済貿易仲裁委員会で、中国側が仲裁申請を申し込む場合は、日本の国際商事仲裁協会という襷がけの仲裁地の約定を紛争解決の条項に反映しているケースも多くあります。
次に、訴訟の場合について、中国の民事訴訟法は、その第25条において「書面による契約において被告の住所地、契約履行地、契約締結地、原告の所在地、目的物の所在地の人民法院の管轄を協議して選択することができる。但し、本法律の新旧管轄および専属管轄についての規定に違反してはならない」と定めており、一定の場合を除いて(「『民事訴訟法』の適用に関する若干問題についての意見」にて例外規定あり)、事前に裁判管轄について双方間の書面合意により確定することは可能です。
 一般的には、中国での訴訟を避けて、日本にするか、第三国に裁判管轄権を置くような合意をした方が良いのではないでしょうか。
 しかしながら、ここで注意して頂きたいのが、日本での判決が中国で執行されなかった例(1994年11月5日大連中級人民法院が横浜地方裁判所小田原支部の判決の執行を拒否)があるということです。これは、大連中級人民法院が、日中間に、お互いの判決の承認・執行に関する二国間または多国間の国際条約がなく、かつこの面における互恵の原則もないことを理由に、日本の判決を中国で強制執行できなかった事例です。
このように訴訟による紛争解決を選んだ場合、日中間を跨ぐ強制執行が不可能という事態に陥り兼ねません。
では、訴訟と仲裁とどちらを選択すべきかが問題となりますが、どちらも一長一短です。渉外契約の場合、国際仲裁にて紛争を解決する方法を採用するケースが多いと理解しております。国際仲裁のメリットとしては、第一に、中国国際経済貿易仲裁委員会に代表されるという常設の仲裁機関では、専門性の高い仲裁人を選任することができ、裁判官よりもレベルの高い判断が下されるケースがあるようです。第二に、仲裁の場合、一審終局制をとっているため、事件を迅速に解決することに効果があります。第三に、裁判所より仲裁による執行が容易であること。第四に、仲裁は非公開で、企業秘密を守り易い環境にあります。他方、デメリットとして、上述の第二のメリットの反面でありますが、一回きりの勝負なので、自分に不利な判断が出ると手詰まりになってしまうことなどが挙げられます。


質問5「外高橋保税区に支店設立は可能かどうかについて」
 上海外高橋 保税区に弊社香港法人Aの"支店"を設立できるでしょうか? 日本の感覚で言う"支店"が不可能な場合、どのような法人格が必要でしょうか?
 以下のスキームを勝手に考えているのですが、これが成り立つものでしょうか? 条件付で成り立つ場合はその条件をお教えください。(支店が設立できたとして)支店aは保税区外企業Bから製品を購入し、保税区外企業Cへ販売します。(本来の商流は香港企業Aが上海企業Bから製品を購入し、上海企業Cへ販売なのですが、便宜的に支店が商流と物流を一致させる事を考えました。)
 支店aは売上などを香港の本社Aに送付する。上海企業B、Cとの取引はUS$が前提。増値税、企業Bから購入時の保税区の保証金などは了承しています。

回答5.
 中国で外国法人の支店(中国でいういわゆる分公司)を設立できるのは、銀行、保険、航空などごく一部の業種に限られており、一般的には中国で営業行為を行うためには、中国現地に現地法人を設立する必要があります。
 支店形態では不可能なことは上で述べたとおりです。外高橋保税区で貿易会社を設立した場合であれば、ご提示のスキームで営業行為を行うことも可能です。ただしB社、C社が貿易権を持っていない場合、交易市場などを通す必要があります。
送金についてですが、このケースでは外高橋保税区の現地法人から香港会社への売上送金はできません。送金をす るためには原則、現地法人からの配当という形をとる必要があります。

(「投資機構ニュースNo.101」に掲載)