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−中小企業の進出と問題点−
信金中央金庫総合研究所アジア業務相談室室長 篠崎幸弘氏
ただ今ご紹介に預かりました信金中央金庫総合研究所アジア業務相談室長の篠崎でございます。事務局の皆様には平素より私共の貿易投資相談業務に関しまして、多大なるご理解ご協力を賜りこの場をお借りして厚くお礼申し上げます。
それでは、私からは昨年に引き続き、「中小企業の進出と問題点」について、昨年の報告を踏まえて最近の状況についてご報告をさせていただきたいと思います。
大手企業と中小企業の相違点
まずは、最近の状況についてご報告させていただく前に、今さらではございますが、大手企業と中小企業の相違点について簡単に整理させていただきたいと思います。
大手企業と中小企業の違いをそれぞれ一言で表せば、大手企業には『豊富な経営資源』があり、中小企業には『限られた経営資源』しかないということだと思います。表のとおり人材も然りであり、大手企業は人材が豊富で対応も組織的であり、進出にあたってプロジェクトチームが当然のようにできてくる、自分がやらなくても誰かがやってくれます。中小企業は少人数で社長を中心に取り組まざるを得ず、プロジェクトチームもなかなか作れないのが現状だと思います。
資金力、原材料の物流・調達面、情報収集力、交渉力でも然りです。大手企業は専門部署があり、海外拠点も持っていますので、情報収集力が高いのは当然です。中小企業は我々のような外部機関頼みとなっております。
中小企業には様々な制約があり、昨年の報告では@F/Sが不完全であること、A進出企業の小規模化による派遣人材が不足していること、B中小企業を本当に理解しているアドバイザーが少ないことについて問題提起させていただきました。そして、最後に、中小企業は現地での情報収集力に劣りますことから、現地調査での工場視察や、現地当局者のキー・パーソン、担当者の紹介など情報面でのご協力をお願いさせていただきました。会員企業の皆様には、中小企業ならびに私共の現地調査に際しまして、ご協力を賜りまして厚くお礼申し上げます。
ここでは一歩進めまして、現状についてご報告申し上げたいと思います。
高まるF/Sに対する認識
私共も中国投資ガイドブックを発刊しておりますが、最近では中国ビジネスに関して様々な方が本を出されています。書店にまいりますと中国ビジネスのハウツー本が所狭しと並んでおり、これまでになく情報が収集しやすくなっております。また、商社OBなどによる中小企業支援のNPO組織が創設され、数だけで言えばむしろ乱立していると言っても過言ではない状況にあります。さらに、中国ビジネス関連ホームページについては、もちろん日中投資促進機構が草分け的存在であるわけですが、各地の中小企業支援センター、商工会議所等公的機関のホームページでも充実がみられますので、中小企業のF/Sに対する認識は高まっております。つまり、中小企業にF/Sをしっかりやろうという気運がありますので後はきちっとした支援体制を整備すれば良いということとなります。
中国に進出したい企業は東京、名古屋、大阪を中心とした地域から地方の中小企業に広がっているように思います。JETRO、中小企業総合事業団、各地の商工会議所のセミナーを見ましても確実に中国セミナーが増えておりますし、中国側投資誘致団も地方でセミナーを開催するケースが増えております。しかしながら、地方の中小企業においては情報の不足のほか、社内の国際化も進んでいないのが現状です。私は先月、ある地方の会社へ訪問してお話を伺ってまいりました。実はこの会社、売上の90%以上を輸出が占めていますが、英語を話せるのが2代目の専務だけで、中国人と話したこともないが中国ビジネスをしたいというご相談でした。こんな状況ですから、会社に欧米人が来ただけでもなんとなく違和感があるそうです。私共といたしましては、この企業の国際化に向けたプログラムから請け負うことで帰ってまいりました。研修生の受け入れ、中国視察等公的機関の支援プログラムを交えながら一歩一歩国際化を図っていくこととしています。そして、我々に対するこういったご要望は、かなり多いと感じております。
色々な組織ができアドバイザーの数は急増しておりますが、中小企業を本当に理解し全体をコントロールできるアドバイザーは不足していると思います。先程申し上げましたが商社OBなどによる中小企業支援のNPO組織等が創設されていますが、立ち上がったばかりでどれくらい中小企業を理解されておられるか、どんなことを目指しておられるのか未知数です。調達、生産管理、環境対策などの分野別の専門家は増えましたが、こうした専門家をまとめ、進捗状況に合わせて企業側、開発区側に適切にアドバイスができるコーディネーター役の人が不足しているように感じます。大手企業であれば、プロジェクトマネージャーが的確に対応しますが、中小企業では社長を補佐していく人がどうしても必要なのです。
目立つ下請企業との関係強化
さらに、申し上げますと中小企業は法務に弱く、一方中国が大きく変貌している昨今、コーディネーターには法務、会計、開発区等の最新の事情に精通してないといけないわけですが、一度大手企業から出てしまいますとなかなか最新の情報が手に入らないのが現状です。日中投資促進機構は、今後情報の発信基地として重要な役割を果たしていってもらいたいと思います。チャネルが増えるという意味では組織が増えることは歓迎すべきことですが、各組織が単独で動くことは非効率であり、日中投資促進機構等を中心に持てる力を結集していくことが重要だと思います。今回の機構ニュース100号の記念座談会において日中投資促進機構、JETRO、私共信金中央金庫が中小企業の対中進出支援について協力に向けた話し合いができたことは大変意義のあることと思っています。
また、3月8日月曜日になりますが,日本商工会議所の方で「中国ビジネス研究会」の発足記念講演が行われ、経済産業研究所の津上主席研究員と小職が講演いたします。この研究会は日本商工会議所が全国の商工会議所と連携して中小企業のために講演、相談を受けていこうと言うものです。こちらも中小企業にとって有効なアクセスポイントとして機能してくれることを願っております。
現状について、もう一点ご報告させていただきますと、これまではどちらか言いますと競争力強化の観点から原価低減のため現地企業からの調達に切り替える企業が目立っておりましたが、最近では中国市場の急速な拡大に伴い、温暖化にかかる二酸化炭素排出規制、環境汚染防止等を考えますと下請企業の関係強化に向かう企業がいくつか出ております。やはり、市場の拡大に伴う大量生産、そして品質、環境基準への早期対応などの課題クリアを考えますと現地企業では時間的、技術的に難しいということで現場では日系下請企業が必要になっているのではないでしょうか。
人材育成の必要性
最後に今年も中小企業のためにいくつか提案をさせていただきたいと思います。中国進出を目指す中小企業の中には派遣する人材がいないという企業が多くあります。大手企業から35才前後の、将来自社の中国ビジネスを背負って立つ人材を経営者として下請メーカーに派遣していただければありがたいと思います。日中投資促進機構がチャイナビジネススクールであるのと同じように、将来への登竜門として将来自社の中国事業を背負って立つような優秀な人材を協力企業に派遣していただければ、中小企業は助かりますし大手企業にも新しい人材育成の場ができることとなります。この点については、事務局の方にも機構の仲介機能発揮ということでお願いさせていただいております。
次に、法律などについて、我々支援機関と大手企業が連携してサポートすることができないかと思っております。下請メーカーが中国進出しようとするときに、我々も一生懸命中小企業を支援してまいりますが、現地サイドにまでは目が届かないところもあります。大手企業が現地で見ている中で中小企業を多少なりともサポートしていただければ、中小企業が失敗するようなことが減るように思います。そういう意味で大手企業に我々のような支援機関との連携をお願いできればと思います。
また、中小企業は交渉力が劣りますので、先行して出ている大手企業が一言『うちの関係先が出てくるのでよろしく。』と地元の開発区や税関に声をかけてもらえば、中小企業は非常に助かると思います。大手企業のパフォーマンスを関係先企業のために使ってもらえればありがたいと思います。
中小企業にとっての投資環境の改善についてですが、開発区の中小企業に対する理解はまだ十分でありません。さらに、WTO加盟時の約束の履行だけでは中小企業が進出するにはハードルが高すぎる業種などがあります。こういった投資環境の改善について、日中投資促進機構にもご尽力をお願いいたしまして私からの報告とさせていただきます。
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