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日中租税条約における"みなし"間接外国税額控除適用期限の終了問題
| 日中租税協定の交換公文に定める「みなし間接外国税額控除」の適用期限が今年末で終了します。従来、中国の現地法人が利益に対して企業所得税の減免を受けた場合、日本ではそれがなかったものとみなして、法人税等から減免されない場合の配当所得税額を控除することが認められていましたが、これが延長されないと、来年以降一部の企業はメリットを享受できなくなり、また、今後利益計上(配当)が期待される企業及び新たに中国に投資する企業はこのメリットを享受する期間が10年間に限定され、長期の税務メリットの享受を受けることができなくなります。この問題について、プライスウォーターハウスクーパースのシニアマネージャー・公認会計士である簗瀬正人氏にわかりやすく解説していただきました。 |
Q1:中国の優遇税制のメリットは、日本ではどのように反映されているのでしょうか?
A1:中国優遇税制は中国ばかりでなく、投資元である日本においても法人税の軽減というメリットを受けることができます。即ち、中国で軽減された税金については、日本の法人税計算上外国税額控除のみなし規定によって、日本でメリット(日本の法人税等の減額)を受けることが出来ます。このことは、日中租税条約及び交換公文に規定されています。
Q2:みなし外国税額控除とは何ですか?
A2:外国で適用された現地優遇税制(外資企業所得税の減免)について、あたかも当該税の減免が無かったものと"みなし"て日本の法人税等から控除することを"みなし外国税額控除"と言います。即ち、発展途上国への投資等において、現地優遇税制のメリットを投資元である日本において享受できるようにする効果を有しているのが"みなし外国税額控除"制度です。"みなし外国税額控除"には"みなし直接外国税額控除"と"みなし間接外国税額控除"の二つの方式があります。
日本企業が直接納付(源泉税を含む)すべき(外資企業)所得税のうち優遇税制の適用により減免された直接納付外国法人税を納付したと"みなし"て日本の法人税等から控除することを"みなし直接外国税額控除"と言います。具体的には、中国からの配当時に免税されている源泉税や利子、ロイヤルティーについて軽減されている源泉税について、あたかも納付されたものと"みなし"て日本の法人税から控除することが認められます。
これに対して、日本企業の投資先である外国関係会社が納付すべき(外資企業)所得税のうち優遇税制の適用により減免された間接納付外国法人税を納付したと"みなし"て日本の法人税等から控除することを"みなし間接外国税額控除"と言います。具体的には、日本企業が中国関係会社から配当を受けるときにおいて、中国関係会社の中国外資企業所得税が減免されている場合には、当該外資企業所得税の減免額があたかも納税(間接納付)されたものと"みなし"て日本の法人税等から控除することが認められます。
Q3:今問題となっている日中租税条約上の適用期限問題とはどういうことですか?
A3:租税条約は二国間で活動する企業及び個人に対して二重課税を回避するように、所得税の取扱いを定めた条約です。日中租税条約は1983年に締結され、翌年発効しています。
交換公文は条約を補完する目的で取り交されるものですが、1991年に中国の外資企業所得税法の大改正に伴って、新税法の優遇税制を旧税法同様に取扱うことを定めています。
この交換公文の規定によれば、"みなし"間接外国税額控除制度の適用期限が2001年中に開始する事業年度若しくは減免措置(優遇税制の適用)後10年目の事業年度の何れか遅い事業年度を最終適用年度としています。即ち、交換公文締結の1991当時既に減免措置を受けていた中国関係会社等については2001事業年度が最終適用年度となり、1992年以降に減免措置を受けた中国子会社等についてはその時点から10年後の事業年度が"みなし"間接外国税額控除の最終適用年度になります。
なお、配当、ロイヤルティー及び利子に対する源泉税に係わる"みなし直接外国税額控除"については日中租税条約本文の規定の適用ですので、租税条約そのものが改定されるか若しくは中国での優遇税制が廃止されない限り、今後も享受できます。
Q4:もし"みなし間接外国税額控除"の期限が延長されない場合、日本の投資企業はどの程度メリットを失うのでしょうか?
A4:では、以下に具体的な事例で説明しましょう。
日本の製造企業P社(決算日は3月31日)は、中国に持分55%の合弁会社S社(生産型外資系企業)を経済技術開発区(国税税率15%、地方所得税0%)に1992年に設立したとします(決算日は12月31日)。S社では設立初年度から継続的に課税所得を生じており、2年間免税及び3年間50%減税の優遇税制は既に適用され、現在は15%の税率のみが適用されているものとします(地方所得税3%は免税)。
S社は従来より未処分利益の全額を配当しており、2001年度も未処分利益全額を日中双方の出資企業に配当したとします(配当日は2002年3月31日)。即ち、2001年度未処分利益の合計額21百万人民元(日本円約321百万円:換算レート1元=¥15)を全額配当します。
この場合、これまでは下記の計算結果のように、約12百万円の配当が有る場合には親会社の税納税額比較では約37百万円の減額効果(受取配当額に対して約21%)が認められましたが、"みなし間接外国税額控除"の期限が今年限りで終了すると、来年以降こうしたメリットがなくなることになります。
@)S社の利益・納税状況
| 課税所得 |
(人民元) |
円換算額 |
| 課税所得 |
28,000 |
420,000 |
| 外資企業所得税額 (15%) |
(4,200) |
(63,000) |
| 3項基金(税引き後利益の約10%) |
(2,400) |
(36,000) |
| 未処分利益 |
21,400 |
321,000 |
利益処分・配当
P社配当 (55%)
配当源泉税 (免税)
P社への送金額 |
(21,400)
11,770
0
11,770 |
(321,000)
176,550
0
176,550 |
(単位:千元、千円)
A)影響比較(受取配当手取り額)
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みなし間接外税控除適用有り |
みなし間接外税控除適用無し |
参考:外税控除適用しないケース |
| 受取配当額 |
176,550 |
176,550 |
176,550 |
| 受取配当176,550千円の法人税等額(42%) (a) |
74,151 |
74,151 |
74,151 |
| 間接外国税額申告加算の法人税等額(42%) (b)31,156 x 42% |
13,086 |
13,086 |
0 |
直接外国税額控除:
源泉税(直接納付)
みなし直接外税控除(c)
176,550 x 10% |
0
(17,655) |
0
(17,655) |
0
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間接外国税額控除:
間接外税控除(間接納付)(d)
(63,000 x 176,550÷(420,000−63,000))
みなし間接外国税額控除適用軽減額(e)
(420,000 x33%)−63,000) x 176,550÷(420,000−63,000)) |
(31,156)
(37,387) |
(31,156)
(37,387) |
0
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外税控除適用による受取配当手取り影響額(f)
176,550−((a)+(b)−(c)−(d)−(e)) |
175,511 |
138,124 |
102,399 |
| 受取配当手取り比率(f)÷176,550千円 |
99% |
78% |
58% |
(単位:千円)
Q5:今後どのように対応すべきでしょうか?
A5:上記適用事業年度終了が目前の中国関係会社を有する日本企業においては、"みなし間接外国税額控除"の適用メリットを享受するために税務戦略(タックス・プランニング)上早期の中国関係会社等からの配当受領を手配することも考えられます。
しかしながら、投資の初期段階では多額の利益計上を期待できない中国関係会社を有する日本企業及び現在中国進出を検討している日本企業としては、将来長期間に亘って"みなし"間接税額の控除適用を享受できるように日本企業が一致して日本国政府並びに中国政府に対して適用期限の延長を働きかけることが肝要であると考えます。
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