中国での国内販売に対する進出企業の対応について

要旨

日用品の販売網については、従来の代理店を経由し小売店で販売という形態が地方都市では依然中心であるのに対し、上海市では外資系スーパーやコンビニエンスストアといった新しい小売業態のプレゼンスが急速に高まっており、直販型販売網の構築を各社とも進めている。今後は、各地方都市にこの流れが波及していく可能性が高い。
販売戦略では、販売エリアは、(1)上海・華東地区限定型、(2)沿岸部(華北、華東、華南)+地方都市展開型、(3)全国的な都市展開型と分かれたが、統一的な見解としては、農村部を除外した4億人の市場をターゲットとするという点であった。競争相手は、外資(台湾系が多い)・一部ローカルであるが、年々価格競争は厳しくなっており、同一価格帯での競争を強いられる企業が増加している。したがって原料の調達率もほぼ100%現地調達としている企業が多い。
債権回収については、過去の失敗を踏まえ、現金販売を原則とする企業が多く、掛売の相手は外資系や過去の実績で間違いないと判断できる代理店に限られている。
日用品で模倣品の被害が深刻だとしたのは、トイレタリー用品を販売する会社のみで、全体として、模倣品は存在するものの経営に大きな影響が出るまで被害は大きくなっていないという印象を受けた。

I.はじめに

 最近、中国国内のマーケットに注目して進出した、あるいは進出を計画する外資系企業が増えている。90年代半ばまでは、外資系企業は加工輸出型での進出が大部分を占めていたが、その後、中国の経済発展に伴う所得の増加により、沿岸部を中心にマーケットとしての魅力が増してきたことから、世界中の注目を集めるようになってきている。特に上海市を中心とした江蘇省、淅江省一体の華東地区では人口1.35億人、GDP2,600億USドル(2001年)、一人あたりのGDP1,900USドル(タイ国とほぼ匹敵)という市場が形成されつつある。
 こういう状況下、既に中国国内販売を主眼として進出した日系企業も多数あり、成功事例などもよく雑誌などで紹介されるようになってきた。
 事務局では2003年1月中旬にこうした中国国内販売に注力している企業を訪問し、調査項目として、(1)販売網の整備、(2)商品戦略・販売戦略、(3)債権回収問題への対応、(4)模倣品対策、などを中心にヒアリングを行った。具体的には、北京では傘型企業(電機メーカー、OA機器メーカー、住宅内設備関係メーカー他)を中心に7社、上海では消費財メーカー(食品、アパレル、日用品)および流通関係を手がけている商社を中心に10社を訪問した。
尚、このレポートは、各訪問企業の個別事例を具体的に紹介するのではなく、各項目ごとに極力類型化を行い、ビジネスモデルとしてまとめることを心がけた。
 また今回は調査対象を、主に現地生産の日用品を消費者に販売している企業、および傘型企業に限定したため、部品などの中間財製造企業、工作機械などの製造設備メーカーについては調査の対象外とした。こちらについては後日調査を行いたいと考えている。

II.国内販売網の整備について

2.現地製造現法からの販売ルートについて
(1).代理店を活用した販売
 基本的に製造現法の製品は、販社の設立が認められていない現状では、それぞれの現法が個別の販売ルートを作っているケースがほとんどである。製造現法が華東地区にあり、かつ全国的に販売を展開しているモデルケースとして企業を考えると、華東の現法での営業活動は、上海市内に連絡事務所を置き、華北地区、華南地区、内陸部に販売分公司を展開するという方式を取る(図2-a)。今回のヒアリングによると、製造現法からの卸売販売においては、上海市のように大規模小売チェーン(スーパー、コンビニ)、百貨店等が流通を支配しつつある都市もあるが、地方都市では依然としてこうした代理店経由での販売ルートが多くなるということであった。
 代理店(批發)経由の販売ルートをみると、華東地区であれば製造現法から一次代理店に製品が販売され、そのまま二次、三次代理店経由で、もしくは小売店に直接販売される。華北・華南・内陸部への販売は各地の販売分公司経由で同様のルートで販売される。
 また、今回訪問した一部の企業では、保税区内商社や保税区外の外商投資卸売企業を利用しているところもあった。
 こうした代理店網の整備については各社とも相当に苦労されているようである。というのも、中国の場合、中国全土はもとより、省市レベルもカバーする広域な卸売業者というものは存在しないというのが現状であり、個々の代理店がカバーする小売店のエリアというのは、極めて限られているためである。したがって、末端の小売店を面でカバーしようとすると、無数の代理店を発掘して、それぞれに営業を行い、契約を結んでいくほかないのである。ある食品メーカーは現在華東地区を中心に、北京、広東省等で販売を行っており、正社員180名、アルバイト200名の計380名の体制で営業活動を行っている。そのメーカーの話によると、中国全土の都市部での営業を視野に入れた場合は、少なくとも3,000名程度の人員が必要となるということであった。

(図2−a)現地日系企業製品の内販ルート(イメージ)


(注1) 華東地区に製造現法を持つメーカーが全国的に販売を展開する際のイメージ図
(注2) 華東地区に製造現法を持つ会社は、連絡事務所ではなく、分公司を置いているところもある。
(注3) 保税区内貿易会社の国内取引仲介は法的にはグレーであるが、実際には広く行われている方式である

(以下は「投資機構ニュースNo.92」に掲載)