中国進出の日系セットメーカーの原材料調達について

はじめに
 家電、OA機器などの日系セットメーカーの中国進出理由としては主に、(1)製造コスト低減を目的とした生産拠点の移転、(2)中国国内マーケット参入のための生産拠点の消費地立地、があげられる。セットメーカーの現地での工程はアセンブリーが中心となり、たとえば生産のためのワーカーのコストが日本の数十分の1で済むなど、中国で生産するがゆえの生産コストメリットは享受できることには異論はなかろう。その一方原材料調達については、全ての原材料を現地調達できるとは限らず、輸入品に頼らざるを得ない、あるいは現地調達できる場合でも現地材にコストの優位性がない場合も多々ある。
 製造コストに占める原材料費の割合は、当機構の第7次日系企業アンケートによれば、総コストの70%以上と回答した企業が40%、総コストの50%以上とすると回答企業数の75%に達する。この結果は、人件費では56%の企業がコストの10%未満と答えているのと対照的であり、このことは、質・量ともに製造に必要十分な原材料をいかに安く調達できるかが今後の競争の中で勝ち組として残るための大きなファクターであることは間違いない。

 今回、事務局では中国に進出したセットメーカー(電機メーカー、OA機器メーカー)およびその部品サプライヤーを約20社訪問(日本および中国)し、セットメーカーからはその原材料調達政策を、部品メーカーからは供給状況についてヒアリングを行った。本レポートはそのヒアリング結果をまとめたものだが、まず原材料の現地調達化のメリットおよびそれを阻害する要因をまとめ(第1章)、次にセットメーカーの既進出日系部品メーカーに対する評価にふれ(第2章)、そのあとセットメーカーのローカルサプライヤー起用を中心とした現地調達化に向けた動きを紹介する(第3章)。一方中国を世界に向けての部品供給基地(IPO)と位置付けるセットメーカーも現れており、その現時点での取り組み、考え方についてもまとめた(第4章)。そして最後に、供給側の部品メーカーから見て、どういう視点で今後中国展開に取り組んでゆくべきか、そのポイントをまとめてみた(第5章)。
 尚、今回のレポートは現在部品メーカーの進出が著しい自動車関連産業にはヒアリングは行っていないが、自動車部品メーカー調査については「投資機構ニュース90号」事務局レポートをネットにも掲載しているので、そちらをご参照いただきたい。


1.原材料の現地調達メリットと調達推進を阻害する要因

(1)現地調達化のメリット

@輸入品に較べ安価な調達コスト
調達が必要な原材料が「現地で製造でき、かつ品質が要求を満たしている」こと前提にした場合、輸入品より現地調達した方がコストが低くなるというのが一般的な評価である。その理由として、現地調達の場合、サプライヤーが生産するときに、人件費格差などを生かした製造コストの低減が可能であるのみならず、海外から輸入する場合と比較し、オーシャンフレート、関税(最終的に国内消費される場合)の負担がないメリットも大きいと思われる。

A生産にあわせたデリバリー・在庫の圧縮
部品の発注から納入までのリードタイムは、輸入品の場合、製造工期に加え、航海日数、通関日数などそれなりの日数が必要になる。確かに飛行機を使えば輸送工期は短縮できるが、電子部品など軽量物でも輸送コストは当然上昇し、また通関日数はこの場合でも省略することはできない。さらに通関に関しては、最近では一部の税関が24時間以内での通関を行うなど工期は短縮されつつあるが、不慮の事態によって通関が滞る事態も容易に予想され、この不確定なリスクに備え厚めに在庫を持つことも必要になる。また原材料を輸入する場合、一般的に購入ミニマムロットが大きく、そのため発注頻度も少なくなり、その分在庫として自社で抱える期間が長くなる。
しかし現地調達の場合、部品産業が集積し交通インフラが整備された華南、最近部品産業の集積が進む華東地区などでは、生産計画に合わせた少ロットかつ頻度の高いデリバリーが可能となり、輸送工期も短く、通関も必要ないため、在庫圧縮が可能となる。また発注からデリバリーの工期が短くなれば急な生産の変動にも対応しやすくなる。

B非関税障壁の回避
中国はWTO加盟前にローカルコンテンツは廃止し、基本的に原材料の調達先は自由に選択できる。しかし地域、製品によっては当局からの行政指導的なローカルコンテンツ要求が残っており、その達成度によって内販比率が制限されたり、また部品輸入の際の完成品での関税率が適用されるなどのケースが現在でも存在するようである。こうしたTRIM条項に違反する障壁は長期的に撤廃されると思われるが、当面の間は当局の意向に従い現地調達率を上げざるを得ないこともある。また今後は、アンチダンピング提訴、セーフガード発動などWTOで認められた通商政策による輸入制限の増加が予想される。現に鋼材、化学品など素材産業ではすでにアンチダンピング提訴、セーフガード発動による輸入制限は既に実施されている。セットメーカーとしては原材料を現地調達化すればこうした通商リスクを回避することができる。



(以下は「投資機構ニュースNo.93」に掲載)

 

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