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はじめに
12月初旬、事務局では中国の自動車部品産業を調査するために華東地区、華北地区の日系自動車部品メーカー9社を訪問した。今回の日系自動車部品メーカーの訪問を通して、感じた点は以下の2点であった。
一つは、中国の自動車産業が生産、販売の両面で活況を呈しているということである。WTO加盟前後から日本を含む世界の主要自動車メーカーが現地生産を始めたことから、新型車の発売が相次ぎ、自動車関係者、マスコミのみならず一般市民まで自動車産業への関心が高い。販売面では、新型国産車の発売が自動車市場を刺激したこともあり、2002年の中国の自動車販売台数は、前年同期比で3割以上も増加している。
二つ目は、WTO加盟に伴う競争激化に対する危機感である。従来、自動車産業は高関税と輸入割当制度により保護されてきたが、これらの措置は段階的に引き下げまたは撤廃されていく。自動車メーカー各社は、輸入車、国産競合車との本格的な競争に備えて競争力の強化に必死に取り組んでいる。
この中国自動車産業の活況とWTO加盟後の危機感は、日系自動車部品メーカーにも大きな影響を与えている。各社とも概ね自動車メーカー向けの生産が好調であり、設備稼働率も大幅に向上している一方、自動車メーカーからの大幅なコストダウンの要請、納期短縮、品質向上のために、今まで以上に原価低減、品質管理、人事労務管理などのレベルアップを図り、企業基盤の強化に取り組んでいる現状を今回の訪問でうかがい知ることができた。
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1.自動車部品産業を取り巻く環境
(1)拡大する中国の自動車市場
最近、中国の自動車市場は大きく伸びている。2000年に初めて200万台を超えた自動車市場は、2002年に入り前年同期比で3割以上も増加しており、通年では300万台を超える勢いである。自動車市場が急増している要因としては、中国の高い経済成長を背景に貨物輸送用、人員輸送用としてトラック、バスの需要が高まってきていることに加えて、急ピッチで建設される高速道路などのインフラ整備が自動車市場の拡大を後押ししている。
自動車市場拡大の最大の牽引車となっているのは乗用車であり、2002年1〜9月は前年同期比5割増と大幅に増加している。乗用車市場が、拡大している要因の一つには個人ユーザーの増加が挙げられる。従来、乗用車は政府機関の公用車、企業の社用車、タクシー用途などの業務用車両が中心であったが、最近は都市部を中心に個人ユーザーが着実に増加しており、北京、広州などの大都市では個人ユーザーが半数以上を占めていると言われている。
乗用車の販売が拡大した理由の一つに、品質、性能面で輸入車に対抗できる国産車が相次いで販売されたことも挙げられる。ここ数年、上海VW、一汽VW、上海GM、広州本田汽車、天津トヨタ汽車などが最新モデルの中国生産を進めてきたことから、国産乗用車のバリエーションが一気に増加してマーケットを刺激した。さらにWTO加盟の影響と民営企業の自動車産業参入により、乗用車の価格、特に小型車の価格が大幅に下げられたことも個人の乗用車購入を後押ししている。
表1 中国の自動車販売台数 単位:台
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2000年
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対前年比 |
2001年
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対前年比 |
2002年1〜9月 |
対前年比 |
| 乗用車
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612,737
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107%
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721,463
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118%
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880,004
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149%
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| 商用車合計 |
1,475,889
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117%
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1,642,202
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111%
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1,504,938
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126%
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トラック |
774,901
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103%
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818,433
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106%
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824,741
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135%
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| バス |
700,988
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137%
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823,769
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118%
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680,197
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177%
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| 合計 |
2,069,069
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114%
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2,088,626
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113%
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2,384,942
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134%
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| 出所:中国汽車工業総合分析他 |
(2)自動車市場拡大による部品メーカーの収益好転
日系自動車部品メーカーの対中投資は、1994年7月に公布された「自動車工業産業政策」が一つの呼び水となり、折からの中国投資ブームと相まって投資が加速していった。
中国政府は、「自動車工業産業政策」の中で部品産業の育成・発展を掲げ、外資自動車メーカーの参入においては、一定の国産化率達成を条件に課したことから、完成車メーカーの現地生産がスタートする前に日系部品メーカーが先行して進出するケースが多かった。
上記の事情から日系部品メーカーが生産した製品は、国産自動車メーカーへの納入、または輸出が主体となり、国内販売が中心の日系部品メーカーの大半は、販売先の確保に加えて売掛金の回収にも悩まされた。特に日系部品メーカーが対中進出を始めた90年代中頃は、自動車市場の伸びが鈍化していたことも重なり、多くの国産自動車メーカーが、稼働率の低下と乱売による販売価格の下落により収益が大幅に悪化したことから部品メーカーへの購入代金支払いが滞るのが一般的となっていた。当時の日系部品メーカーは、売掛金回収が経営の大きな課題となっており、自動車メーカーへの納入代金の替わりに販売用車両を現物で返済してもらうということがしばしばあった。
表2 中国の自動車生産台数 単位:台
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| 出所:中国汽車市場展望他 |
90年代後半まで伸び率が鈍化していた自動車市場は、2000年から拡大基調に入り、2002年は前年同期比3割増という飛躍的な伸びを示している。自動車市場の拡大は、自動車メーカーはもとより自動車部品メーカーの経営にも大きなプラスとなっている。
90年代末まで生産能力と販売台数の大きな乖離から、稼働率の低下と安値乱売による収益悪化の二重苦に喘いでいた国産自動車メーカーおよび自動車部品メーカーは、自動車産業本来の「規模の経済」のメリットを享受できる体制に変わりつつある。今回訪問した日系自動車部品メーカー9社ともに売上、収益ともに好転しており、生産能力の増強を進めている企業がほとんどであった。また、経営上の最大の課題であった債権回収遅延問題も概ね解消している。
日系部品メーカーの経営が軌道に乗ってきたのは、自動車市場の拡大という外的要因のみならず、企業自身の自助努力の成果も大きい。各社とも原価低減、品質管理、人材育成に力を入れており、例えば、今回訪問したA社ではこの3年で生産性が2倍になったとの説明であった。また、90年代中頃以降に設立した部品メーカーは、中国人の管理者はじめ現場監督者が育成され、企業のマネージメント、生産活動が安定してきたことも要因としてあろう。
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表3 日系自動車部品メーカーの収益状況(訪問企業9社)
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設立年 |
形態 |
輸出比率 |
単年度黒字 |
累損解消 |
配当 |
| A社 |
1994年 |
独資 |
70% |
1999年 |
2000年 |
実施 |
| B社 |
1995年 |
独資 |
30% |
2000年 |
2003年予定 |
未実施 |
| C社 |
1995年 |
独資 |
50% |
1998年 |
2000年 |
実施 |
| D社 |
1995年 |
合作 |
95% |
1997年 |
2000年 |
実施 |
| E社 |
1989年 |
合弁 |
中国国内のみ |
1994年 |
1997年 |
実施 |
| F社 |
1995年 |
合弁 |
中国国内のみ |
1998年 |
2000年 |
実施 |
| G社 |
1995年 |
合弁 |
80% |
2003年予定 |
2004年予定 |
未実施 |
| H社 |
1997年 |
独資 |
80% |
2002年予定 |
2003年予定 |
未実施 |
| I社 |
2000年 |
合弁 |
20% |
2000年 |
未定 |
未実施 |
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(3)WTO加盟と自動車産業への影響
WTO加盟で最も影響を受ける産業の一つが農業と並んで自動車産業と言われている。中国の国産自動車は、WTOに加盟した現在も輸入車への高関税と輸入割当(数量制限)の保護を受けており、輸入車との本格的な競争は存在しないに等しい。しかし、今後、数年間で関税は大幅に引き下げられ、輸入数量も段階的に撤廃されることから、近い将来、激烈な競争が避けられなくなると見られている。さらにWTO加盟前後に外資を含む国産自動車メーカーの新型車の生産、販売が相次いだことから、中国の自動車市場の競争は一段と厳しくなった。
前述の自動車市場の競争激化を背景に自動車メーカーから部品メーカーへの購入部品コストダウンの要請が厳しくなっているようである。今回の部品メーカー訪問調査の際にも各社とも自動車メーカーから大幅なコストダウンを求められているとのことであった。外資自動車メーカーは、コスト削減の主要な手段として、輸入部品の国産化を推進しており、部品メーカーに対しては、「品質は輸入部品レベル、価格は輸入部品より安く」との要求を出している。部品メーカーも自動車メーカーの要求に応えるべく、調達品の原価低減、生産性の向上などによりコスト削減を進めているが、自動車メーカーの求めるコストダウンの目標とはかけ離れているとの説明もあった。今後、自動車の生産台数の増加に伴い、競合する日系部品メーカー、欧米部品メーカーの新規参入または製品アイテムの拡充により、自動車部品メーカー間の競争はより厳しくなることが予想される。
自動車部品も完成車同様、WTO加盟後は関税率が引き下げられ、2006年には平均10%になる。また、TRIM協定(貿易関連投資規制)の不整合措置を撤廃するとしたことから、ローカルコンテンツ要求を加盟時に撤廃すると約束している(なお、自動車の国産化を明記している「自動車工業産業政策」は、2002年12月現在でも改定されていない)。
自動車部品の関税率の引き下げと国産化要求の撤廃から、国産自動車部品メーカーにとっては、今後は輸入部品との競争も厳しくなると思われる。
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表4【WTO加盟合意内容(自動車関連)】
| 項 目 |
合意内容 |
関税
・完成車(乗用車)
・自動車部品 |
100%〜80%の税率を2006年7月までに25%まで引き下げる。
2006年までに平均10%に引き下げる。 |
| 輸入数量制限 |
輸入数量制限は2005年までに廃止。それまでの間、割当数量は60億ドルから年率15%の割合で拡大される。 |
その他
・生産モデルの選択
・認可金額の制限
・エンジン製造 |
生産タイプ、モデルの規制は加盟2年後に撤廃。150百万ドルまでの投資については地方政府の認可で可能。(従来は30百万ドル)加盟時に外資100%出資が可能。(従来は50%) |
| 流通分野 |
加盟後3年以内に卸売業、小売業については地域制限、店舗数、外資比率制限を撤廃。 |
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