Vol.22 中国娯楽指南・焦点影片いちおし映画/JIAO DIAN YING PIAN

2000年ベネチア映画祭アジア映画賞・ナント三大陸映画祭グランプリ
80年代の中国を生きる若者をリアルに描く「プラットホーム」
(12.1〜東京・渋谷ユーロスペースにてロードショー、以降全国でロードショー予定)

 『プラットホーム』は涙がでるような感動のシーンはありません。劇的な展開もないし、主演の俳優たちはほとんど演技の経験も浅い、セミプロのような人ばかり。とびっきりの美男美女もいません。しかしだからこそ、リアリティがあり、映像に説得力が出てくるのです。
 舞台となるのは中国の80年代、山西省の汾陽(フェンヤン)という古い城壁が残る小さな街。物語は文化劇団の革命劇(!)の舞台から始まります。この劇団の4人の男女の日常が描かれるのですが、前述のように、ドラマチックな場面がないかわりに、細かい描写が巧みなのに感心させられます。とくに際だつのは時代時代を彩っていたポップスの数々と、彼らのファッション。最初のころ、何気なく彼らが聞いているのはテレサ・テンなのですが、やがてロックに変わっていきます。 ラッパズボン(!)を得意げにはいていたかと思えば、ロックに感化されて長髪になったり。はじめの頃、映画館にはマルクスとエンゲルスが、彼らの部屋には周恩来の写真が飾ってあるのですが、それがラスト近くになると、風景画のカレンダーに変わっていたりする。劇団の稽古場の毛沢東の肖像画の前で、フラメンコを踊るシーンも象徴的です。時の進行を確実に、しかしさりげなく表す賈樟柯監督の力量は相当なものでしょう。単調な日常の積み重ねのようでいて、10年たてば社会はもちろん、ずいぶん個人の状況はかわるものだと客観的に気づかされるのです。
  

印象的だったのが、城壁の上での明亮と瑞娟の会話。ちょうど画面左半分は城壁しか見えないのですが、2人はこの死角になったところで話をしているのです。時々交互に視界の中に現れてはまた消えてしまうので、見る側としては壁の向こう側の2人がどういう感じで話しているのか、とても知りたくなるのです。
 また、街と街を走る長距離バスで城壁をくぐったり、街を後にする描写も状況をさりげなく語って効果的。バスのフロントガラスの裏側から都市間の地名表示ごしに街の風景を見るような仕掛けになっています。ワンピースやスーツ姿で肉体労働、広州帰りの張軍の「ニセ西洋人」ファッションなど、中国通のみなさんならきっとクスッと笑ってしまうようなシーンも150分間の中にちりばめられています。ぜひお気に入りのシーンをいろいろ探してみてください。(「中国電影館」Yan)

この作品の上映日程など詳しい情報はこちらの公式サイトをご覧ください。 

 

 

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