最近の対中投資の動向に関する報告

1)2000年の世界からの対中投資の状況

 中国対外貿易経済合作部の資料によりますと、2000年の世界からの対中直接投資は、認可件数22,532件(前年比32%増)、契約金額627億ドル(同比51%増)、実行金額408億ドル(同比1%増)といずれも増加し、1999年までの減少傾向に歯止めがかかりました。特に、先行指標となる契約金額は前年比実額215億ドル増(同比51%増)と大幅に増加した点が注目されます。

国・地域別で見ますと、香港をはじめ日本、韓国、台湾のアジア主要投資国や地域の他、アメリカ、ドイツ、バージン諸島などいずれも増加を示しています。なお、バージン諸島から投資が急激に増加していますが、これは台湾企業がバージン諸島経由で対中投資を行っていることに起因すると言われています。

このように、2000年の世界からの対中投資が増加しました背景には、中国の高い経済成長率のもとでの海外輸出需要への対応が挙げられます。また、今年中のWTO加盟実現が予想され、市場開放、法整備、外資政策の透明性向上などへの期待感も対中投資回復の底流にあるものと考えられます。

2)2000年の日本からの対中投資の状況

 日本の対中投資は、バブル経済の崩壊など国内経済の停滞やアジア金融危機の中国への波及懸念などから96年以降減少傾向にありましたが、2000年の日本の対中投資は一転し、認可件数1,602件(前年比37%増)、契約金額36億ドル(同比38%増)、実行金額32億ドル(同比7%増)と何れも増加に転じました。この意味で、2000年は対中投資の1つの重要な転換点の年と申せます。

最近の対中投資は、国際的価格競争が激化する中、コスト削減を目指し新たに進出する企業、親会社や主力納入先の進出に伴う関連企業の進出、WTO加盟に向け最終の努力をしながら成長を続ける中国市場をターゲットとする進出など多様な動きが認められます。
対中投資金額の回復は、新規進出企業による投資だけでなく、既進出企業の増資による積極的な投資拡大が大きな役割を果たしていることは見逃せない点と申せます。

進出地域につきましては、上海市・浙江省・江蘇省を含む華東地区と広東省への集中化傾向が大きな特徴と申せます。

業種別では、当機構への相談などを通 じ、IT関連分野や繊維分野の投資が大きく伸びているという実感があります。IT関連分野では、これまでの製品のアセンブリーや周辺機器の生産に止まらず、最近ではキーデバイスの生産にも広がりを見せており、繊維分野では、これまでの生地、アパレルから新たに副資材までカバーされるようになりました。
他に自動車関連(バス、自動車エンジン、カーエアコンなど)、通信機器関連(携帯電話用プリント基板、コネクター、リチウム電池)、電子部品関連(フラッシュメモリー、LCD、コンデンサー)通 信事業関連(光ファイバー、ソリューション事業など)、物流関連、住宅設備関連、発電・送電事業関連等々への新規投資がございました。

3)当機構への相談案件の状況
相談件数は2000年第1四半期から第3四半期(4月〜12月)までで204件と前年同期比9%増となりましたが、相談内容を見ますと、投資相談が同比42%増と大きく伸びているのに対し、トラブル相談は逆に同比48%減の状況にあり、前向きな相談が増加しています。

投資相談の内容は、新規進出における全般的な留意点のほか、個別には上海外高橋保税区への進出、事業再編(リストラ、上場、合併、撤退など)、傘型企業、ソフトウエア開発、R&D、委託加工貿易、WTO加盟後の中国の状況についての相談が多数ございました。

投資相談での進出地域は、華東地区と広東省に大きく集中しています。上海は大きなマーケットを狙っての進出が中心であり、広東省は加工貿易拠点としての進出検討が多いのが特徴です。
また、業種別では、IT関連、電子機械、物流等が多く、化学、製紙など大型相談案件も増加しています。

 

最近の外資政策の動向に関する報告

対中投資の増加・減少には諸々の要因があるわけですが、この数年は中国の外資政策の動向が大きく影響しているように思います。

一昨年まで対中投資は減少局面 にありましたが、これは増値税輸出還付問題や生産設備輸入に対する免税措置の変更、あるいは外貨規制強化、加工貿易保証金制度の導入など、多くの進出企業に不利な影響を及ぼした問題がその主な原因となったように思われます。

こうした大きな問題は、毎年のように発生していましたが、これらは一昨年までにほぼ 決着し、昨年はこれといった問題はありませんでした。

但し、外資誘致策の方も、企業に大きなインパクトを与えるものはありませんでした。 総じて、昨年は比較的変化の少ない一年だったと言えると思います。

表1は、昨年の主な外資政策の動きを整理したものです。全体としては改善措置や優遇措置が目立ちますが、これらはすでに発表されていたものが大半です。

例えば、加工貿易の保証金問題に関して、4月と5月と7月に改善措置がとられました が、いずれも一昨年暮に発表された方針にもとづいて出されたものです。

また、2月、7月、9月には税の優遇措置がとられていますが、これも発表は一昨年秋 で、それが規定化されたものです。

なお、改善措置に関して言えば、これらの多くは当機構が要望してきたものでもあります。昨年12月には傘型企業に対して増値税の輸出還付を認める措置がとられましたが、これも昨年8月の第10回合同会議で日本側から申し入れたものです。

新しい外資優遇策としては、5月に輸出加工区の設置が発表されました。これは、保税 手続きや増値税還付などの面での優遇を看板にした輸出メーカー専用の開発区ですが、 区外との取引が不便ということもあって、今のところ多くの企業の関心を集めるまでに は至っておりません。

なお、中西部への外資誘致策に関しては、6月に中西部19省・自治区・直轄市の優位 性産業リストが発表され、これらのプロジェクトに投資する場合には国の奨励プロジェクトと同様の優遇が与えられることになりました。しかし、昨年10月にも発表すると言われ ておりました総合的な優遇策は先送りとなり、来月の全人代で発表されると言われております。

一方、WTO加盟と関連する新しい開放措置や規制緩和措置についてですが、これも目 立った動きはありませんでした。
従来、外資を制限していた分野を開放するという点では、1月に船舶会社に関する規定が 出され、その後4月の研究開発センター、5月の医療機関がありましたが、多くの企業が 関心を持っている流通・サービス分野に関しては新しい措置はとられませんでした。

9月には電信条例が公布されましたが、外資参入の条件については別 に特別規定を制定 するとされ、今のところ明らかになっておりません。

また、10月には外資基本法のうち、外資企業法と合作経営企業法が改正されました。 国産化義務や外貨バランス義務、あるいは輸出義務に関する条項が改定されましたが、 その実際の運用についてはまだわかっておりません。

先日、中日投資促進委員会との事務局会議で北京へ行った際、中国側(外経貿部外資 司)にこの点を聞いてみましたが、現在検討中ということでした。

こうした問題は、やはりWTO加盟交渉と関わっているものと思われます。 表2は、WTO加盟に関連して今後調整が予想される政策・措置の中で注目さ れる点をまとめたものです。

流通・サービスなどの開放にしても、内国民待遇に関わる規制緩和にしても、大きな 方向性はこれまでの交渉で明らかにされていますが、具体的なところはまだ固まって いないように思います。

例えば、外資企業に対する貿易権の付与については、WTO交渉では加盟後3年以内に 制限を撤廃することが約束されていますが、その具体的な時期や条件はまだわかってい ませんし、各業種の開放についても同様です。

また、内国民待遇に関する規制緩和についても、輸出義務や 国産化義務がどこまで撤廃されるのかわかっておりません。

外資優遇措置についても、中国政府は調整の方針自体は明らかにしていますが、何を なくし何を残すかは検討中としております。

なお表3は、今後改正または制定が予定される法規のリストです。これ はWTO加盟交渉で取り上げられているものですが、今後の交渉次第では変更もありう ると思われますので、あくまでご参考としてご覧いただきたいと思います。

いずれにしても、今年は中国のWTO加盟が確実と言われております。それに伴って、 多く政策調整や法規改定・制定があると思われますので、私ども事務局では会員の皆様にタイムリーかつ的確な情報提供を心掛け ていきたいと考えております。


表1 2000年の外資政策の動き

時 期
内  容
00.1 ○保険監管委,保険公司管理規定発布−施行は3月1日(13)
○交通部他,独資による船舶会社設立に関する規定発布、施行(28)
00.2 ○国税総局,ソフトウェア企業等への所得税優遇を通達(1)
00.3 ○外管局,給与・技術料等の国外送金に納税証明提出を義務づけ(1)
00.4 ○人民銀行,加工貿易の輸入保証金納付で銀行保証方式を導入(10)
○外経貿部,外資研究開発センター設立に関する規定を発布(18)
○国税総局,外国企業の技術料収入への営業税課税で再通達−課税対象を94年1月以降の契約分に限定(24)
00.5 ○税関総署,加工貿易管理制度でB類企業の輸入保証金の半減措置実施(1)
○外経貿部,合弁・合作による医療機関設立に関する規定発布−施行は7月1日(15)
○税関総署,輸出加工区に関する基本規定発布、施行(24日)
00.6 ○国家計委他,中西部地区の外商投資優位生産業目録発布−外資には外商投資産業指導目録の同様の優遇を供与(16)
00.7 ○国税総局,外資系企業の国産設備購入時の企業所得税優遇に関する規定施行−前年度より増加した税額の40%を控除(1)
○国家経貿委他,加工貿易保税制度で制限類商品から電気亜鉛メッキ鋼板を除外−日系企業の要望を反映(1)
○外経貿部他,外資系企業の国内投資に関する規定発布、施行−再投資の条件を明確化(25)
00.8 ○全人代,特許法改正公布、施行(25)
00.9 ○財政部他,ソフトウェアと集積回路に関する税の優遇規定発布、施行(22)
○国務院,中華人民共和国電信条例公布(25)
00.10 ○全人代常務委,外資企業法と中外合作経営企業法改正公布、施行−国産化義務撤廃、外貨バランス義務撤廃、輸出奨励など(31)
00.12 ○国税局,傘型企業への増値税輸出還付適用を通知−2000年1月以降の輸出が対象(8)
○国税局,老企業に2001年から一律に増値税輸出還付を適用する旨通知(22)

表2 WTO関連の外資政策・措置の注目点

2001年2月現在

項 目
注 目 さ れ る 内 容
〔サービス貿易分野の開放〕貿易権付与 ・二国間交渉では、加盟後3年以内の制限撤廃で合意・生産企業への製品輸入権付与の時期・条件は?
・商業企業、貿易企業の条件緩和のスケジュール・内容は?
・傘型企業への製品輸入権付与の時期・条件は?
・保税区貿易企業への輸出入権付与の時期は?
・サービス企業への輸入権付与の時期・条件は?
保険業の制限緩和 ・二国間交渉では、5年以内に設立地
・出資比率制限を撤廃することなどで合意・設立認可の数量制限緩和のスケジュールは?
銀行業の制限緩和

・二国間交渉では、2年以内の中国企業向け人民元業務の許可、5年以内の設立地制限撤廃などで合意
・各制限緩和のスケジュール・条件は?

証券業の開放 ・二国間交渉では、3年以内に外資比率1/3までの証券会社を 認可することなどで合意
・開放のスケジュール・条件は?
電気通信分野の開放 ・加盟時から全ての通信サービスを開放することなどで合意
・外資への開放に関する法規の制定時期・内容は?
建設分野の制限緩和 ・二国間交渉では、5年以内に独資による設立を許可することなどで合意
・各制限緩和のスケジュール・条件は?
運輸業の制限緩和 ・二国間交渉では、4年以内に全ての制限を撤廃することなどで合意
・各制限緩和のスケジュール・条件は?
〔内国民待遇〕輸出義務撤廃 ・WTO協定上、明示的な禁止規定は無い
・外資企業法(改正)では輸出義務を輸出奨励に改定
・産業政策にもとづく制限業種への規制があるか?
国産化義務撤廃 ・二国間交渉では加盟時撤廃を約束
・外資企業法(改正)、合作経営企業法(改正)では国産化義務条項を撤廃
・産業政策にもとづく制限業種(自動車、携帯電話等)への規制も撤廃されるか?

表3 今後改正・制定が予定される主な法規

法  規  名
内     容
時   期
中外合弁企業法(改正) 技術移転、国産化義務、外貨バランスに関する各条項を改定 2001年3月
中外合弁企業法実施細則(改正) 同上 2001年3月
外資企業法実施細則(改正) 設立条件、外貨バランスに関する各条項を改定 加盟前
外国企業投資方向指導暫定規定(改正) 制限類項目のうち輸出額70%以上のものを許可類と見なす旨の条項を改定 加盟前
中華人民共和国対外貿易法(改正) 対外貿易経営権に関する条項を改定 2001年4月
反ダンピング・反補助金条例(改正) 反ダンピング調査の申請、調査停止に関する各条項を改定 加盟前
機電製品輸入管理暫定弁法(改正) 割当、許可、登記に関する各条項を改定 2001年4月
輸出入関税条例(改正) 課税価格、知的財産権に関する各条項を改定 加盟前
輸出貨物原産地規則 既存法規を統一 2001年6月
セーフガードに関する条例 発動条件、無差別適用、調査、損害認定方法などを規定 加盟前
外資金融機構管理条例(改定) 外資金融機関に対する差別的条項を改定 2001年6月
外資保険公司管理規定 新制定 2001年4月
株式市場管理弁法(改正) 会員を国内機関に限定している条項を廃止 加盟前
外資通信事業管理条例 新制定 未定
海上輸送サービス管理条例 新制定 未定
外国弁護士事務所の駐在事務所設立に関する暫定施行弁法 新制定 未定
外商投資商業企業試点弁法(改正) 認可形態、場所、チェーンストアの条件に関する各条項を改定 2001年6月
旅行代理店管理条例(改正) 認可形態に関する条項を改定 2001年4月
輸出入商品検査法(改正) 検査内容に関する条項を改定 2001年6月
薬品管理法(改正) 輸入品と国産品の検査基準についての差別的条項を改定 加盟前
著作権法(改正) TRIPS協定に従い、著作権者及び継承人に原作品と複製物の商業的貸与権を許可 加盟前
著作権法実施細則(改正) 同上 加盟前
コンピュータ・ソフトウェア保護条例(改正) 保護期間、登録、紛争解決手続きに関する各条項を改定 加盟前
商標法(改正) 周知商標保護、司法救済措置に関する条項を新設 加盟前
商標法実施細則(改正) 同上 加盟前
特許法実施細則(改正) 特許権者の排他的権利、司法手続きに関する条項を新設・改定 加盟前
経済特区の生産企業に対する輸出入権登記制に関する暫定規定 加盟後3年以内に全ての企業に貿易権を付与 加盟後第1年の年末以前
生産企業の輸出入権付与に関する通知 同上 加盟後第2年の年末以前
輸出入権を申請する企業の資格調整及び管理強化に関する通知 同上 加盟後第3年の年末以前
技術・設備輸入管理に関する暫定施行規則 WTO交渉で合意しない措置については独自に規定 加盟後8ヵ月以内
中外合弁・合作企業の生産目的での自動車輸入許可申請に関する通知 輸入許可手続きに関する合意による 加盟後6ヵ月以内
外資企業の国家統制品目の輸入に関する通知 国の規制に関する原則を承諾 加盟時
外資企業に対する砂糖、綿花、植物油、羊毛等の輸入割当についての暫定施行規則 関税割当に関するWTO作業部会のコミットメントと輸入許可手続きに関する合意による 加盟時
外資企業の輸入管理に関する実施規則 同上 加盟後6ヵ月以内
外資企業の輸入許可申請に関する実施規則 同上 加盟時
都市交通車両の修理に関する規定 市場アクセスの条件については合意せず(公共交通部分) 加盟時
有毒化学品の初回輸入時の扱いに関する規定 輸入登記手続きに関する原則を承諾 未定
知的財産権の保護に関する税関の実施規則 時間的制約、TRIPSとの乖離等の問題あり 2001年8月
国有企業の年度監査に関する暫定規定 市場アクセス制限に抵触 加盟前
政府の費用徴収項目・基準に関する通知 国の規制に関する原則を承諾 加盟後3年以内
企業の補充的養老保険についての意見 サービス貿易交渉でのWTO作業部会のコミットメントを承諾 未定
ボイラー・圧力容器の輸出入検査・管理に関する規則 関係部門の任務と検査手続きは調整済みも、規定が未修正 2001年中
コンピュータソフトの著作権登記に関する規則 法規が未制定 2001年3月
技術導入促進に関する一部規則 ローカルコンテント要求の公表、技術移転の強制禁止などTRIM協定にもとづく規則が未制定 加盟時に現行規則を廃止
外資企業の中国産品輸出による外貨バランスの問題に関する規則 TRIM協定の為替均衡要求禁止に関する条項が未制定 未定
中外合弁企業の外貨バランス目的での輸出に関する通知 同上 未定
(出所)中国政府がWTO作業部会に提出したリストから抜粋。